
歯科技工所ベースアップ支援料の届出 2026年5月に歯科診療所がやること
厚生労働省は2026年4月23日に、歯科技工所ベースアップ支援料を2026年6月から算定したい歯科診療所向けのスケジュール資料を更新し、2026年4月24日には様式101・102と提出経路を公開しました。結論から言うと、2026年6月から算定を始めたい歯科診療所は、2026年5月7日から2026年6月1日必着で様式101を地方厚生局都道府県事務所へ提出する必要があります。
ここで重要なのは、この支援料が歯科診療所の院内人件費を直接上乗せする制度ではないことです。制度趣旨は、外部の歯科技工所に所属する歯科技工士の賃金改善を、委託元の歯科診療所が後方から支える点にあります。したがって、院内の歯科技工士が製作した補綴物等では算定できず、委託先歯科技工所との連携が前提になります。
しかも、厚生労働省の特設ページでは、歯科技工所ベースアップ支援料の「わかりやすい説明資料」はまだ近日公開予定のままです。つまり、簡単な説明資料を待ってから動くのでは遅く、今は公開済みの一次情報だけで届出実務を進める局面に入っています。この記事では、2026年4月23日・24日にそろった資料を基に、歯科診療所が2026年5月に確認したい実務を整理します。
2026年4月23日・24日に何が更新されたか
今回のポイントは、制度の概要が示されたことではなく、算定開始に必要な事務が具体化したことです。
2026年6月算定開始には5月7日から6月1日必着で届出
厚生労働省の2026年4月23日更新資料では、歯科技工所ベースアップ支援料を2026年6月から算定するには、2026年5月7日から2026年6月1日必着で地方厚生局都道府県事務所へ様式101を提出すると示されています。ここで読むべきなのは、「5月中に出す」ではなく、「5月7日から6月1日必着」という具体的な受付期間です。
この日付が見えたことで、歯科診療所の準備はかなり現実的になりました。4月中は委託先歯科技工所との確認と院内整理、5月上旬からは様式101の最終化と提出、6月から算定開始という流れで逆算できます。逆に、5月下旬まで委託先確認を引き延ばすと、締切直前に必要情報がそろわない可能性があります。
様式101・102と専用メール提出が公開された
厚生労働省の特設ページでは、2026年4月24日更新として、歯科技工所ベースアップ支援料の届出様式101・102が掲載されました。あわせて、届出は管轄する地方厚生局都道府県事務所ごとに設定された専用メールアドレスへExcelファイルを提出する方式が原則で、やむを得ない場合は書面提出と示されています。
これは実務上かなり大きい更新です。紙様式の郵送前提で準備していた医院は、誰がExcelファイルを整え、誰のメールアドレスから送り、誰が送信記録を保存するかまで決める必要があります。経営者と事務担当の間で、届出担当、確認担当、送信後の管理担当を分けておくと混乱しにくくなります。
歯科技工所ベースアップ支援料は何を評価する仕組みか
届出前に制度の芯を押さえておかないと、対象外のケースまで算定できると誤解しやすくなります。
1装置15点で、2027年6月以降は増額される
厚生労働省の歯科改定概要では、歯科技工所ベースアップ支援料は1装置15点で新設され、2027年6月以降は所定点数の100分の200に相当する点数で算定すると示されています。つまり、外部技工を使う医院にとっては、単発の経過措置ではなく、2027年度も見据えた仕組みとして設計されています。
ただし、15点という数字だけを見てすぐ採算計算に走るのは危険です。この制度は、支援料収入を医院内に留保するものではなく、委託先歯科技工所の賃金改善につながる委託費増額へ回す前提です。点数表だけ見て判断せず、委託費の流れまでセットで考える必要があります。
外部委託が対象で、院内技工は算定できない
同じ改定概要では、歯科技工指示書等に基づいて外部の歯科技工所へ補綴物等の製作等を委託した場合に算定し、歯科医師の直接の指示に基づいて院内の歯科技工士が製作や修理を行う場合には算定できないと明記されています。ここは最初に院内共有しておきたい条件です。
また、資料では本区分をM005またはN008の装着時に算定するとし、支台築造、暫間歯冠補綴装置、3次元プリント有床義歯等のように装着の費用が含まれる区分では、その区分の算定日に本支援料を算定すると整理しています。つまり、単に外部技工を使っているかだけではなく、どの症例でどの日に算定対象になるかを院内で整理しておく必要があります。
歯科診療所が2026年5月に確認する実務
今回の届出は、レセプト担当だけでは完結しません。委託先歯科技工所との確認と、院内の経理設計が両方必要です。
委託先歯科技工所の賃金改善意向を確認する
特掲施設基準通知の抜粋では、歯科技工所ベースアップ支援料は、委託先歯科技工所が支援料による賃金改善の意向を有する場合に、その歯科技工所と連携して届出を行うことを求めています。したがって、診療所側だけで「届出しておこう」と決めても足りません。
実務では、まず委託先歯科技工所に、制度を使って賃金改善を進める意思があるか、どの時期から委託費増額を織り込むか、必要な確認事項は何かを聞く必要があります。複数の技工所へ委託している医院では、どの委託先が制度に参加するかを一覧化しないと、算定の前提がぶれやすくなります。
支援料は委託費増額へ全額充てる
同通知では、当該支援料を全て歯科技工所への委託費の増額に充てることも明記されています。これは制度の本質であり、医院の一般収入として扱うものではありません。したがって、経理面では、支援料算定分と委託費増額分の対応関係を説明できる状態にしておく必要があります。
ここを曖昧にすると、届出は通っても運用で困ります。委託費の改定時期、対象となる委託先、対象となる補綴物等、増額後の単価や計算方法を院内メモで残しておくと、8月報告や将来の確認に耐えやすくなります。
どの補綴物等をどの算定日に扱うか整理する
制度上は、外部の歯科技工所へ委託した補綴物等が対象ですが、現場では「外部委託の症例」と「院内対応の症例」が混ざることがあります。さらに、装着日と製作依頼日がずれるため、どの日に支援料を算定するかを請求側が正しく把握していないと取りこぼしや誤請求が起こります。
そのため、5月中にやるべきなのは、対象区分ごとの一覧表づくりです。補綴物等の種別、委託先歯科技工所、装着日、支援料算定の可否をチェックできる形にしておくと、6月以降の請求が安定します。
届出後に必要になる管理
今回の制度は、様式101を出して終わりではありません。むしろ、届出後の記録管理が制度運用の中心になります。
8月の様式102提出と3年間の書類保管
特掲施設基準通知の抜粋では、毎年8月に前年度の賃金改善の取組状況を評価するため、様式102の別添1による実績報告書を提出すると示されています。さらに、算定に係る書類は算定年度終了後3年間保管する必要があります。
つまり、6月に算定開始したらすぐ、8月提出を見据えた記録の持ち方へ切り替えなければなりません。委託費増額の記録、委託先とのやりとり、算定対象の一覧、届出ファイルの送信記録をまとめて保管する運用を、5月の時点で決めておく方が安全です。
わかりやすい説明資料待ちで止めない
厚生労働省の特設ページでは、歯科技工所ベースアップ支援料の「わかりやすい説明資料」はまだ近日公開予定のままです。ただ、締切と様式はすでに公開されているため、説明資料を待ってから準備を始めると6月算定開始に間に合わなくなるおそれがあります。
いま現場で優先すべきなのは、委託先確認、様式101の入力準備、専用メール提出の段取り、8月報告の管理台帳づくりです。説明資料は公開されたら補助的に参照し、土台となる実務は先に進める方が合理的です。
なぜ今このテーマが注目されているか
今回の制度は、単なる点数新設ではなく、技工の担い手確保とも結びついて見られています。
技工関連三団体が日本歯科医師会へ活用協力を要望
日本歯科技工士会の2026年4月17日公開記事では、歯科技工関連三団体が2026年4月8日に日本歯科医師会へ、歯科技工所ベースアップ支援料の活用による処遇改善への協力を要望したと公表しています。背景には、歯科技工士の処遇改善と安定した歯科医療提供体制への危機感があります。
この動きは、制度が単なる事務改定ではなく、現場の人材問題と結びついたテーマであることを示しています。補綴物等を外部委託する歯科診療所にとっても、委託先の持続可能性は診療体制に直結するため、制度活用を他人事にしにくい状況です。
制度説明の段階から届出実務の段階へ移った
2026年3月5日の時点では、制度は主に概要説明の段階でした。しかし、2026年4月23日・24日にスケジュールと様式が出たことで、テーマは「制度を理解する」から「6月算定に間に合わせる」へ移っています。
4月上旬に制度概要を確認した医院でも、今あらためて見るべきなのは締切、様式番号、提出先、委託先との調整です。ここを更新せずにいると、制度を知っているのに実際の届出だけ遅れる状態になりかねません。
FAQ
自院に歯科技工士がいなくても関係ありますか
関係あります。むしろ制度の前提は、外部の歯科技工所へ補綴物等を委託している歯科診療所です。院内に歯科技工士がいなくても、外部委託があれば確認対象になります。
委託先と話さずに届出できますか
制度上は難しいです。特掲施設基準通知では、委託先歯科技工所が賃金改善の意向を有する場合に、その歯科技工所と連携して届出を行うことを求めています。少なくとも、相手方の意思確認と委託費増額の整理は必要です。
様式101だけ出せば終わりですか
終わりではありません。毎年8月の様式102による実績報告と、算定関係書類の3年間保管が必要です。6月算定開始を目指すなら、届出と同時に報告・保管の設計まで進めておくべきです。
出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」
- 厚生労働省「歯科技工所ベースアップ支援料を算定する歯科診療所向け」
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】(抜粋)」
- 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(抜粋)」
- 日本歯科技工士会「歯科技工関連三団体が日本歯科医師会へ要望書を提出」
Selectdays CS担当者
Selectdaysの実運用のサポートを担当しています。店舗のDX化に関するお悩み解決のノウハウを発信します。
