国民生活基礎調査、歯の病気通院の確認点
2026年7月15日に厚生労働省が公表した2025年国民生活基礎調査の概況では、傷病で通院している人の割合を示す通院者率が人口千人当たり409.2と示されました。健康状況の資料では、歯の病気が男女とも通院者率の上位5傷病に含まれています。
この数字は、歯科医院に「患者が増える」と単純に読むものではありません。むしろ、生活者の通院行動の中で歯科が継続的に位置づいていることを確認し、自院の定期管理、中断患者対応、医科疾患情報の更新、高齢患者の通院継続を見直す材料です。
この記事では、国民生活基礎調査の歯の病気に関する読み方を、歯科医院で使える確認順に整理します。
3行要約
- 2025年国民生活基礎調査で、通院者率は人口千人当たり409.2、65歳以上は678.6でした。
- 歯の病気は、男女とも通院者率の上位5傷病に含まれ、歯科通院が生活者の継続的な受療行動の一部であることが分かります。
- 歯科医院は、リコール台帳、中断患者、医科疾患情報、高齢患者の通院困難要因を点検する材料として使うのが実務的です。
国民生活基礎調査で示された歯の病気の位置づけ
今回のポイントは、歯の病気が単独の歯科統計ではなく、国民全体の通院行動の中で上位に出ていることです。歯科医院は、この統計を「地域の生活者が何に通院しているか」を見る入口として使えます。
通院者率は人口千人当たり409.2
厚生労働省の健康状況資料では、傷病で通院している者を通院者とし、2025年の通院者率は人口千人当たり409.2とされています。男性は398.1、女性は419.7です。2022年の総数417.3よりは低いものの、全体として通院は生活者の大きな行動であり続けています。
歯の病気は男女とも上位5傷病に入る
傷病別の図18では、男性・女性ともに歯の病気が通院者率の上位5傷病に含まれています。女性では歯の病気が56.4、男性では48.2と示され、高血圧症や脂質異常症、糖尿病、眼の病気などと並んで確認すべき通院理由になっています。
通院者率を歯科需要の増減だけで読まない
国民生活基礎調査の数字は、歯科医院の売上や予約数を直接予測する資料ではありません。通院者率は、傷病で通院している人の割合を示す指標であり、治療内容、予防受診、通院間隔、重症度までは分かりません。
2022年比では全体の通院者率は下がっている
2022年の通院者率は総数417.3、2025年は409.2です。65歳以上でも2022年696.4から2025年678.6へ、75歳以上でも729.2から707.6へ下がっています。ここだけを見ると通院が減ったように見えますが、歯の病気はなお上位5に残っています。
医院では自院データとの突き合わせが必要
この統計だけで「自院の歯科需要が増える」「特定の診療メニューが伸びる」と断定するのは危険です。自院の初診数、定期管理数、中断患者数、訪問歯科の依頼、医科疾患を持つ患者の割合と突き合わせて、初めて実務判断に使えます。
歯科医院が見るべき患者層
歯の病気が通院上位に残っていることは、歯科医院が「誰に継続受診を促すか」を見直す材料になります。特に、高齢者、医科通院中の患者、中断患者の3層は優先して確認したいところです。
65歳以上と75歳以上は通院者率が高い
2025年調査では、65歳以上の通院者率が678.6、75歳以上が707.6、80歳以上が705.8です。高齢患者では、歯科だけでなく医科通院、服薬、介護、移動手段、家族支援が重なります。予約管理では、キャンセル理由や通院困難の兆候を残すことが重要です。
医科疾患を持つ患者では問診更新が要点になる
傷病別上位には、高血圧症、糖尿病、脂質異常症なども並んでいます。歯科医院では、歯の病気だけを見るのではなく、医科通院、服薬、お薬手帳、主治医照会の必要性を定期的に更新する運用が求められます。
院内で使える確認チェックリスト
- リコール台帳で、前回受診から6か月以上空いている患者を抽出する。
- 中断患者について、痛みの有無だけでなく、通院手段、介護、仕事、医科受診との重なりを確認する。
- 高血圧症、糖尿病、脂質異常症など医科通院がある患者の問診更新日を確認する。
- 高齢患者のキャンセル理由を、体調不良、移動困難、家族都合、入院・入所などに分けて記録する。
- 歯科衛生士の定期管理時に、次回来院の必要性を患者の生活状況に合わせて説明する。
統計を読んだだけでは、院内の行動は変わりません。上のチェックリストを、受付、歯科衛生士、院長、訪問担当のどこが見るかまで決めると、数字を実務に落としやすくなります。
国民生活基礎調査を患者説明に使うときの注意点
患者説明では、統計を不安材料として使わないことが大切です。「歯の病気が多いから危険です」と煽るよりも、通院が生活者にとって一般的な健康管理の一部であることを伝える方が自然です。
歯科だけを特別扱いしすぎない
今回の資料では、歯の病気は高血圧症や糖尿病などと同じ通院行動の中で示されています。患者には、医科の定期受診と同じように、歯科でも症状が強くなる前に確認する意味があると説明できます。
統計から個別患者の重症度は分からない
国民生活基礎調査は、個別患者の病状や診療内容を示すものではありません。したがって、患者説明では「全国調査では歯の病気で通院している人も多い」という背景に留め、診断や治療方針は自院の診査結果に基づいて説明します。
次に確認したい一次情報
今回の記事は国民生活基礎調査の概況を基にしています。歯科医院がより具体的に地域戦略や診療体制へつなげるには、歯科疾患実態調査、歯科医療費動向、患者調査、医療施設調査などをあわせて見る必要があります。
歯科疾患実態調査と歯科口腔保健関連情報
厚生労働省の歯科口腔保健関連情報には、歯科疾患実態調査、歯周病検診、後期高齢者を対象とした歯科健診マニュアルなどがまとまっています。国民生活基礎調査で通院行動を見た後は、歯科疾患や健診の資料で背景を補うと読み違いを減らせます。
よくある質問
歯の病気が上位5に入ったので、歯科患者は増えますか
この統計だけでは断定できません。国民生活基礎調査は通院している人の割合を示す資料であり、自院の患者数、予約数、診療内容を直接予測するものではありません。自院データと合わせて見る必要があります。
通院者率が下がっているなら、歯科需要も下がっていますか
そうとは限りません。2025年の総通院者率は2022年より低い一方で、歯の病気は男女とも上位5傷病に含まれています。歯科医院では、需要の増減よりも、継続受診が途切れる患者をどう拾うかを確認する方が実務的です。
患者説明に統計を使ってもよいですか
使えますが、煽りや診断の代わりには使わない方が安全です。「全国調査でも歯の病気は通院理由の上位にあります。症状が強くなる前に定期的に確認しましょう」という程度の背景説明に留めるのが自然です。
出典
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況 Ⅲ 世帯員の健康状況」
- 厚生労働省「歯科口腔保健関連情報」
- 日本歯科医師会「歯科口腔保健・医療の基本情報『現在を読む』」
Selectdays カスタマーサクセス担当
Selectdaysの実運用のサポートを担当しています。店舗のDX化に関するお悩み解決のノウハウを発信します。
