
歯科診療所の賃上げ支援と届出、6月前の要点
令和8年5月27日時点で、歯科診療所が急いで確認したい論点は2つあります。1つは、厚生労働省が示している医療機関等向けの賃上げ・物価上昇支援です。もう1つは、令和8年6月以降に歯科外来・在宅ベースアップ評価料を算定するための再届出です。
特にベースアップ評価料は、令和8年6月1日から算定したい場合、地方厚生局の案内では令和8年5月7日から6月1日必着の期間で届出が必要とされています。これまで届け出ていた施設も再度の届出が必要です。給付金の申請は都道府県ごとの案内を確認する部分がありますが、再届出の準備は医院側で先に進められます。
歯科診療所が見るべき支援は2種類ある
診療所等賃上げ支援事業は賃金改善に使う給付金
診療所等賃上げ支援事業は、有床診療所、無床診療所、薬局、訪問看護ステーションなどに対し、従事者の処遇改善につなげるための給付金を支給する仕組みです。歯科診療所も医科と同じく対象に含まれます。
厚労省資料では、無床診療所(医科・歯科)は1施設あたり15万円、有床診療所(医科・歯科)は令和7年8月1日時点の使用許可病床数に7.2万円を乗じた額とされています。ただし2床以下の場合は1施設あたり15万円です。
診療所等物価支援事業は物価高への支援
診療所等物価支援事業は、足元の物価高騰に対応するための支援です。無床診療所(医科・歯科)は1施設あたり17万円、有床診療所(医科・歯科)は令和7年8月1日時点の使用許可病床数に1.3万円を乗じた額とされています。ただし13床以下の場合は1施設あたり17万円です。
賃上げ支援と物価支援は目的が異なります。賃上げ支援は賃金改善の結果報告が前提になるため、給与処理や帳簿管理まで含めて確認する必要があります。
賃上げ支援は「もらって終わり」ではない
対象期間は令和7年12月から令和8年5月まで
賃上げ支援は、令和7年11月末時点の賃金水準を、令和7年12月から令和8年5月までの6か月間で改善することを基本にしています。令和8年度中に申請する場合でも、この期間の賃金改善が必要とされています。
一時金や特別手当を使えるのは、令和7年12月分から令和8年3月分までの最大4か月分です。令和8年4月と5月については、基本給の引き上げや毎月支払われる手当の支給による対応が必要です。
賃金台帳などは後から確認される可能性がある
Q&Aでは、申請時や実績報告時に証拠書類の添付を求めない扱いが示されています。ただし、賃金台帳等の帳簿は実績報告内容の確認で必要に応じて提出または提示を求められる可能性があります。補助金額の確定年度の終了後5年間は、医院側で保管する前提で運用を組むべきです。
院内では、対象職員、賃金改善の方法、支給月、基本給等に含める範囲を整理しておくと、都道府県への申請や後日の確認に対応しやすくなります。
6月以降のベースアップ評価料は再届出が必要
既に届け出ていた歯科診療所も対象になる
九州厚生局の案内では、令和8年6月以降にベースアップ評価料を算定するすべての医療機関等について、令和8年5月7日から6月1日必着の期間中に届出が必要とされています。これまで届け出ていた医療機関や訪問看護ステーションについても、再度の届出が必要です。
歯科外来・在宅ベースアップ評価料についても、外来・在宅ベースアップ評価料の届出案内を参照する形で整理されています。提出先や提出方法は管轄の地方厚生局で異なるため、医院所在地の厚生局ページを確認してください。
期限を過ぎると6月算定に間に合わない可能性がある
近畿厚生局は、令和8年6月1日から算定する場合の提出期限を令和8年5月7日から6月1日必着とし、期限を過ぎた場合は7月以降の算定になる旨を案内しています。6月診療分から算定したい医院では、様式作成、院内確認、提出方法の確認を同時に進める必要があります。
特に、賃金改善計画や対象職員の整理は、給付金申請にもベースアップ評価料にも関係します。別々の作業として扱うより、院内の給与資料を一度で確認するほうが実務負担を抑えやすくなります。
医院で今日確認するチェックリスト
給付金と届出を分けて確認する
まず、賃上げ支援、物価支援、ベースアップ評価料の3つを混同しないことが重要です。賃上げ支援は都道府県ごとの申請案内、物価支援も自治体の案内、ベースアップ評価料は地方厚生局への届出が中心になります。
- 令和8年6月以降も歯科外来・在宅ベースアップ評価料を算定するか
- 令和8年6月1日必着の再届出に間に合うか
- 管轄厚生局の届出様式と提出方法を確認したか
- 令和7年12月から令和8年5月までの賃金改善内容を説明できるか
- 賃金台帳、給与規程、手当の支給根拠を保管できるか
- 都道府県の診療所等向け給付金ページを確認したか
対象職員の整理は早めに行う
厚労省のQ&Aでは、対象医療機関に勤務していれば、直接保険診療に携わっていない職員の賃金改善も含めて差し支えないとされています。一方で、通勤手当や扶養手当のように労働者の個人的事情で支給される手当は、賃金改善の対象となるベースアップには含まれません。
受付、歯科助手、歯科衛生士、事務職員など、医院ごとに職種と給与体系は異なります。対象者と対象外の手当を一覧化し、給与計算担当者と院長が同じ前提を持てる状態にしておくことが実務上の第一歩です。
よくある疑問
Q. 無床の歯科診療所はいくら支援されますか。
厚労省資料では、無床診療所(医科・歯科)の賃上げ支援は1施設あたり15万円、物価支援は1施設あたり17万円です。ただし、申請方法や受付時期は都道府県ごとの案内を確認する必要があります。
Q. 令和6年度改定でベースアップ評価料を届け出ていれば、今回は不要ですか。
不要とはいえません。地方厚生局の案内では、令和8年6月以降にベースアップ評価料を算定するすべての医療機関等について、既に届け出ていた施設も再度の届出が必要とされています。
Q. 一時金だけで6か月分の賃金改善をしてもよいですか。
厚労省Q&Aでは、一時金や特別手当は令和7年12月から令和8年3月までの最大4か月分とされています。令和8年4月と5月は、基本給の引き上げや毎月支払われる手当の支給が必要です。
Q. 申請時に賃金台帳を添付しなければ不要ですか。
不要とは考えないほうがよいです。Q&Aでは、申請時や実績報告時の添付は求めない一方、必要に応じて提出または提示を求めることがあるため、証拠書類は5年間保管する扱いが示されています。
今後の確認ポイント
都道府県と管轄厚生局の両方を見る
診療所等の給付金申請は都道府県ごとの案内を確認します。一方、ベースアップ評価料の届出は管轄の地方厚生局ページで様式、提出先、提出方法を確認します。同じ「賃上げ」でも窓口が違うため、院内で担当者を分ける場合は情報共有が必要です。
令和8年6月1日を過ぎると、届出の扱いや算定開始月は管轄厚生局の案内確認がより重要になります。この記事の情報は令和8年5月27日時点の一次情報に基づくため、実際の提出前には最新ページを確認してください。
出典
- 厚生労働省「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について」
- 厚生労働省「医療分野の賃上げ支援のご案内」(令和8年2月27日作成)
- 厚生労働省「令和7年度 医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業に関するQ&A(第1版)」(令和8年2月27日)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」(令和8年3月5日版)
- 九州厚生局「ベースアップ評価料の届出について(令和8年度改定)」(2026年5月11日)
- 近畿厚生局「ベースアップ評価料等の届出について」(令和8年5月12日)
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