
歯科電子カルテ導入12%、今確認したい3つの違い
厚生労働大臣は2026年9月29日、同年夏に一部の歯科医療機関を対象に実施した抽出調査について、電子保存の3条件を満たす歯科電子カルテを導入しているとの回答が約12%、3条件を満たさないカルテ作成支援機能付きレセプトコンピューター(レセコンカルテ)が約80%だったと説明しました。
ただし、約12%は全国の正確な普及率ではありません。調査対象数や回収率などの詳細は現時点で確認できず、厚労相も「傾向」と位置づけています。自院に必要なのは、数字を見てすぐ買い替えることではなく、現行システムが何を原本として保存し、電子保存三原則を満たすかを確認することです。
国は2026年度中に歯科診療所向け電子カルテの標準仕様を策定し、2027年度中に準拠製品の認証制度を設ける方針です。この記事では、電子カルテとレセコンカルテの違い、未確定事項、ベンダーへ聞く順番を整理します。
3行要約
- 厚労省の抽出調査では、3条件を満たす歯科電子カルテが約12%、レセコンカルテが約80%でした。
- 約12%は全国の正確な普及率ではなく、電子カルテの一律導入期限も現時点では示されていません。
- 医院は買い替え前に、電子保存三原則、診療録原本、データ移行、標準仕様への対応予定をベンダーへ確認します。
歯科電子カルテ約12%という調査の意味
今回の新情報は、現行システムの多くが「画面でカルテを作れる」一方、電子データ自体を診療録原本として保存できる電子カルテとは限らない実態を数字で示した点です。
約12%は全国普及率ではなく抽出調査の傾向
厚労相は、調査が一部の歯科医療機関を対象とした抽出調査であり、正確な普及率・普及件数は把握していないと説明しています。したがって、「全国の歯科医院の88%が未対応」といった断定はできません。母数、回収率、医院規模別の内訳が正式公表された場合は再確認が必要です。
約80%のレセコンカルテは電子カルテと同義ではない
レセコンは診療報酬請求の情報を作るシステムです。カルテ作成支援機能があっても、紙へ印刷した診療録を原本として保存する運用では、電子データ自体を原本とする電子カルテとは扱いが異なります。画面入力の有無ではなく、原本の保存方法とシステム・運用の要件で判断します。
歯科電子カルテとレセコンカルテの3つの違い
医院が最初に分けたいのは、請求機能、診療録原本、電子保存三原則の3点です。製品名だけで判断せず、契約仕様と実際の運用を確認します。
電子保存三原則は真正性・見読性・保存性
真正性は記録の責任の所在と変更履歴を明らかにし、不正な改変や消去を防ぐこと、見読性は必要時に明瞭な形で表示・出力できること、保存性は保存期間中に復元可能な状態を保つことです。システムだけでなく、ID管理、バックアップ、運用規程など医院側の運用も関係します。
システム判別表
確認項目 | レセコン | カルテコン・レセコンカルテ | 3条件を満たす電子カルテ |
|---|---|---|---|
主目的 | レセプト作成・請求 | 診療内容を入力し紙カルテ作成を支援 | 診療内容を記録し電子的に原本保存 |
診療録原本 | 別に必要 | 紙を原本とする運用が多い | 電子データを原本として保存 |
電子保存三原則 | 通常は請求機能だけでは満たさない | 製品・運用の確認が必要 | システムと運用で満たす |
今確認すること | カルテ機能の有無 | 原本、変更履歴、紙出力、保存方法 | 標準仕様対応、認証予定、移行性 |
標準仕様と認証制度はいつ始まるか
厚労省は2026年度中に歯科診療所向け標準仕様Ver1.0の検討を終え、2026年度末または2027年度初めの公表を目指しています。2027年度中には、準拠製品の開発・改修と認証を進める方針です。
2026年度は仕様策定、2027年度は開発・認証の段階
この工程は、2026年9月時点ですべての歯科医院に導入を義務づけるものではありません。認証要件、認証製品一覧、移行方法が具体化する前に製品を決める場合は、将来の標準仕様へどう対応する予定かをベンダーへ確認します。
補助事業は概算要求で詳細未確定
大臣会見では、歯科電子カルテ関連の令和9年度概算要求額が54億円と説明されました。ただし、予算は確定前であり、補助単価、上限、対象製品、申請時期、想定導入件数は調整中です。「今買えば必ず補助される」と判断せず、正式な予算・実施要領を待つ必要があります。
前回の歯科医療DX工程表から増えた情報
8月27日の医療部会資料では、標準仕様、認証、情報共有サービスの工程が示されていました。9月29日の会見で加わったのは、現行システムの導入傾向と、補助事業の詳細がまだ確定していないという説明です。
工程表だけでは見えなかった現行システムの分布
約12%と約80%という数字により、多くの医院でレセコンカルテと電子カルテの違いを確認する必要があることが明確になりました。一方、調査詳細が未公表のため、地域や医院規模による差はまだ分かりません。
今は買い替え判断より現状把握を優先
標準仕様や認証製品一覧が公表される前は、現行契約の解約時期、データ出力形式、移行費用、紙カルテ保管との関係を整理しておくと、正式制度が出た後の比較がしやすくなります。
歯科医院がベンダーへ確認する5項目
- 現行システムは真正性・見読性・保存性を、どの機能と院内運用で満たしますか。
- 診療録の原本は電子データですか、印刷した紙ですか。
- 修正履歴、操作者、修正日時を確認・出力できますか。
- 患者単位・全件のデータ出力形式と、他社製品への移行条件・費用は何ですか。
- 厚労省の歯科電子カルテ標準仕様Ver1.0と認証制度へ、どの時期・方法で対応予定ですか。
回答は口頭だけでなく、仕様書、契約書、運用マニュアルで確認します。特に「電子カルテ対応」という表現だけでは三原則への適合範囲が分からないため、原本・履歴・出力・復元の具体的な機能を聞きます。
未確定事項と今後の確認先
現時点では、医院ごとの導入期限、全医院への義務化、認証製品、補助の詳細は確定していません。厚労省の標準仕様ページ、社会保障審議会医療部会、令和9年度予算の成立・実施要領を順に確認します。
まだ決まっていないこと
抽出調査の母数・回収率、標準仕様Ver1.0の最終要件、認証審査の手順、補助対象製品、申請期間、補助上限は確認できていません。ベンダーの営業資料だけで確定情報と判断しないことが重要です。
次に見る一次情報
まず歯科診療所向け標準仕様Ver1.0、次に認証制度の要領と認証製品一覧、最後に補助事業の実施要領を確認します。現行製品が認証対象外でも直ちに使用できなくなるとは限らないため、移行期限や経過措置は正式文書で判断します。
よくある質問
レセコンカルテを使っていれば歯科電子カルテ導入済みですか
必ずしも導入済みとはいえません。電子保存三原則を満たし、電子データを診療録原本として保存する仕組みと運用になっているかを確認してください。
2027年度までに電子カルテへ買い替える必要がありますか
2026年9月時点で、すべての歯科医院に2027年度までの買い替えを義務づける一次情報は確認できません。2027年度は標準仕様準拠製品の開発・改修・認証を進める工程です。
補助金を前提に今契約してもよいですか
補助事業は概算要求段階で、対象製品や上限などが未確定です。補助を前提とした契約は避け、正式な予算と実施要領を確認してください。
出典
[1] 厚生労働省「上野大臣会見概要(令和8年9月29日)」2026年9月29日、歯科電子カルテに関する質疑
[2] 厚生労働省「第130回社会保障審議会医療部会 資料」2026年8月27日、資料1 p.15「歯科の医療DX工程表」
[3] 厚生労働省「第130回社会保障審議会医療部会 議事録」2026年8月27日、標準仕様Ver1.0と認証制度に関する説明
[4] 厚生労働省「歯科情報の利活用推進事業に係る調査・検証事業等一式 報告書」令和7年3月、pp.14-16
Selectdays カスタマーサクセス担当
Selectdaysの実運用のサポートを担当しています。店舗のDX化に関するお悩み解決のノウハウを発信します。
