
歯科診療報酬改定Q&Aその2を整理、4月に見直す算定実務
2026年3月31日、厚生労働省は「疑義解釈資料の送付について(その2)」を公表し、令和8年度歯科診療報酬改定に関する歯科分野のQ&Aを追加しました。今回の資料で重要なのは、制度の大枠だけでなく、レセプト請求や院内文書、研修要件のような実務に直結する点が具体化したことです。
歯科医院が2026年4月に優先して確認したいのは、義歯患者への歯科疾患管理料、口腔機能実地指導料の研修要件、訪問歯科衛生指導料と同日の算定、画像診断の扱い、そして2026年6月1日算定開始に向けた施設基準届出です。この記事では、2026年3月5日に出た改定資料と2026年3月31日の疑義解釈その2をつなぎ、今見直すべきポイントを整理します。
2026年3月31日の疑義解釈その2で何が明確になったか
今回の疑義解釈その2は、2026年3月5日に公表された改定資料だけでは読み切れなかった運用の細部を補う位置づけです。特に、義歯管理、口腔機能管理、訪問歯科衛生指導、画像診断で現場の判断が割れやすかった点に答えが示されました。
有床義歯の病名だけでも歯科疾患管理料は算定できる
最も実務影響が大きいのは、歯科疾患管理料の取扱いです。疑義解釈その2では、義歯不適合やMTなど、有床義歯に係る病名のみの患者でも歯科疾患管理料を算定できると明記されました。これに伴い、平成21年の旧疑義解釈にある関連問答は廃止されています。
この整理は、2026年3月5日の歯科改定概要で示された「初診時及び再診時における歯科疾患管理料の評価の統一」とつながります。改定の方向性として管理の評価を見直しただけでなく、2026年3月31日のQ&Aで義歯中心の患者にどう適用するかまで明確になったため、病名登録や算定ルールを旧運用のままにしている医院は早めに見直した方が安全です。
口腔機能実地指導料と訪問歯科衛生指導料の運用が具体化した
口腔機能実地指導料については、施設基準にある研修を口腔機能発達不全症向けと口腔機能低下症向けで別々に受講していても要件を満たすとされました。さらに、訪問歯科衛生指導料を算定した日に、口腔機能実地指導料に係る指導を実施した場合は算定可能と整理されています。
この2点は、外来と訪問の両方を行う医院にとって実務上の意味が大きい部分です。研修の受け方が異なっていても直ちに要件外とせず、届出時には様式17の4に受講した研修をそれぞれ記載する流れになります。同日算定の整理も出たため、歯科衛生士の訪問記録と口腔機能指導の記録様式を分けて運用できているか確認しておきたいところです。
2026年3月5日の改定資料と合わせて見るべき背景
2026年3月31日のQ&Aだけを読んでも実務判断はできますが、なぜその解釈が出たのかは2026年3月5日の歯科改定概要を見ると理解しやすくなります。今回の改定は、かかりつけ歯科医による管理、口腔機能管理、在宅歯科、義歯管理の評価体系を組み替える流れの中にあります。
歯科疾患管理と有床義歯管理の評価体系が見直された
歯科改定概要では、歯科疾患管理料の評価を初診時と再診時でそろえること、有床義歯管理の評価体系を見直すこと、さらに新製有床義歯管理料と歯科口腔リハビリテーション料1の運用を整理することが示されています。実際に疑義解釈その2では、MTのみの患者でも新製有床義歯管理料を算定した月に歯科口腔リハビリテーション料1の「有床義歯の場合」を算定可能とされました。
つまり、今回の改定は単に点数を入れ替えたのではなく、義歯患者に対する管理と指導の流れを改めて整理した改定だといえます。義歯関連の患者を多く診る医院ほど、病名、管理料、リハビリテーション料の関係を一度通しで確認した方がよい局面です。
口腔機能管理と在宅歯科の評価が強化された
2026年3月5日の歯科改定概要では、小児口腔機能管理料と口腔機能管理料の評価引上げや対象患者の拡大、在宅支援歯科診療所等に対する評価の新設、訪問歯科衛生指導の見直しなども示されました。2026年3月31日の疑義解釈その2は、その流れの中で指導料や研修要件の細部を詰めたものと見ると理解しやすいです。
今後も追加の疑義解釈で、口腔機能管理や在宅歯科の周辺ルールが補われる可能性があります。2026年4月はまず、自院がどの点数を算定し、どの施設基準を届け出るのかを整理し、その上でQ&Aの追加を追うのが現実的です。
2026年4月のうちに歯科医院が見直したい実務
2026年6月1日施行まで2か月ありますが、実務準備は4月から動いた方が安全です。特に、レセプト請求の前提になる病名や文書、研修記録は、届出様式が出てから一気に整えるより、先に棚卸ししておく方がミスを減らせます。
病名マスタと指導文書のひな型を点検する
まず確認したいのは、義歯不適合やMTなど義歯中心の患者に対する病名登録と、歯科疾患管理料の算定ルールです。旧解釈を前提に、義歯患者を管理料の対象外として扱っていた院内ルールが残っていないか点検が必要です。
患者に渡す指導文書も見直し対象です。訪問歯科衛生指導料、歯科衛生実地指導料、口腔機能実地指導料の文書には歯科衛生士の氏名を記載する運用がありますが、疑義解釈その2ではカスタマーハラスメント防止等の観点から名字のみの記載も可能とされました。現場の安全配慮として、ひな型を更新しておく意味があります。
研修記録と施設基準届出の準備を前倒しする
口腔機能実地指導料の届出を考える医院は、受講済み研修を一覧化し、どの研修が口腔機能発達不全症向けで、どの研修が口腔機能低下症向けか整理しておくと届出がスムーズです。別々の研修でも要件を満たすとされた以上、記録の残し方が重要になります。
届出スケジュールも前倒しで把握しておくべきです。東北厚生局は、2026年6月1日から算定を行うには2026年5月7日から6月1日必着で届出が必要と案内しています。地方厚生局ごとに様式公開時期は異なり得ますが、少なくとも4月のうちに対象点数と必要書類を整理しておかないと、5月に入ってから慌ただしくなります。
請求で迷いやすいポイント
今回のQ&Aは、点数の新設や改廃だけでなく、請求現場で迷いやすい細かい判断にも触れています。2026年4月の時点で請求担当者と共有しておくと、6月以降のレセプトで混乱しにくくなります。
歯科衛生士名は名字のみ記載でもよい
患者向け文書に記載する歯科衛生士名について、姓名の両方が必要なのかは現場で悩みやすい点でした。疑義解釈その2では、カスタマーハラスメント防止等の観点から、名字のみの記載でよいと整理されました。
これは算定要件を緩めるというより、要件を満たしつつ現場の安全にも配慮できるようにした整理です。単に氏名欄を削るのではなく、名字表記で文書要件を満たす形に統一しておくと運用がぶれません。
2枚目の画像診断は全て半額になるわけではない
画像診断のQ&Aも見落とせません。同日に2枚目を撮影した場合でも、常に診断料と撮影料が50%算定になるわけではなく、偏心撮影で確定診断を行うケースのみ50%、歯科用3次元エックス線断層撮影や根管充填後の確認撮影、パノラマ後の追加撮影などは所定点数で算定できると整理されました。
この違いは、チェアサイドでは感覚的に処理しやすい一方、レセプトでは差が出やすい論点です。撮影目的が確定診断のための同種追加撮影なのか、別の確認や別モダリティなのかを記録に残す運用が必要になります。
FAQ
義歯の病名しかない患者でも歯科疾患管理料を算定できますか
はい。2026年3月31日の疑義解釈その2では、MTや義歯不適合など有床義歯に係る病名のみの場合でも算定可能と明記されました。
口腔機能実地指導料の研修は1つの研修で完結していないと届出できませんか
そのようには整理されていません。口腔機能発達不全症と口腔機能低下症で別々の研修を受講していても該当するとされており、届出時にそれぞれ記載する運用です。
2026年6月1日から算定するにはいつまでに届出が必要ですか
東北厚生局の案内では、2026年5月7日から6月1日必着で届出が必要とされています。実際には自院所在地を管轄する地方厚生局の最新案内も必ず確認してください。
出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
- 厚生労働省「17_令和8年度診療報酬改定の概要〔歯科〕」
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)」
- 東北厚生局「令和8年度診療(調剤)報酬改定等について」
Selectdays CS担当者
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