歯科の指摘事項、カルテと請求の確認点
厚生労働省は2026年7月16日、「保険診療における指導・監査」ページで、令和7年度の特定共同指導・共同指導における主な指摘事項を掲載しました。歯科版の資料では、診療録、医学管理、在宅医療、検査、画像診断、処置、補綴、施設基準、診療報酬請求など、歯科医院の日常業務に直結する指摘例が整理されています。
今回の資料は、新しい点数や新たな算定要件を作る通知ではありません。厚労省資料上も、当時の施設基準や算定要件等に基づく指導で、個別症例等を確認した結果として行った指摘であることが示されています。
この記事では、歯科医院が「歯科 指摘事項」をどう院内点検に使えばよいかを、カルテ、提供文書、検査結果、施設基準、レセプトの確認順に落とし込みます。
3行要約
- 厚労省は2026年7月16日、令和7年度の特定共同指導・共同指導における主な指摘事項(歯科)を掲載しました。
- 保険診療を行う歯科医院は、診療録、歯科技工指示書、歯科衛生士業務記録、管理計画書、検査結果、レセプトの整合を確認する材料として使えます。
- 新しい算定要件として読むのではなく、自院で算定頻度が高い項目から「根拠、記録、文書控え、請求」の順に点検することが現実的です。
今回の歯科指摘事項で何が示されたか
今回の資料は、特定共同指導・共同指導で見られた主な指摘例を一覧化したものです。歯科医院にとっては、個別指導そのものの解説というより、日常の保険診療で説明できる状態にしておくべき記録や請求のチェックリストとして読むと実務に使いやすくなります。
新しいルールではなく、指導で見られた不備の整理
歯科版PDFは、診療録等の記載から始まり、基本診療料、医学管理等、在宅医療、検査、画像診断、投薬、リハビリテーション、処置、手術、麻酔、歯冠修復・欠損補綴、歯科矯正、病理診断、保険外診療、診療報酬請求等までを扱っています。
ここで重要なのは、資料を「この項目がすべて自院に当てはまる」と読むのではなく、「自院で算定している項目について、同じ種類の説明不足や記録不足がないか」を確認することです。特に、算定ソフト上では入力できていても、診療録や交付文書の控えが追いついていない場合は、後から説明が難しくなります。
まず見るべき対象医院
保険診療を行う歯科医院は、規模にかかわらず確認対象です。なかでも、歯科疾患管理料、歯科衛生実地指導料、歯周病検査、歯科訪問診療料、CAD/CAM冠、有床義歯、歯科矯正、静脈内鎮静法、施設基準を伴う点数を扱う医院は、自院の運用に近い項目を優先して見てください。
訪問歯科を行っていない医院、矯正を保険で扱っていない医院、病院歯科ではない診療所では、該当しない項目もあります。全項目を同じ深さで読むより、算定実績と届出状況に合わせて点検範囲を切り分ける方が効率的です。
歯科指摘事項で多い確認軸はカルテと文書控え
資料全体を読むと、歯科指摘事項の中心は「診療をしたか」だけではなく、「診療録や文書で要件を説明できるか」にあります。院長、勤務医、歯科衛生士、レセプト担当が別々に確認するのではなく、同じ症例を起点に記録と請求をつなげて見ることが大切です。
診療録は診断根拠と算定根拠を分けて見る
診療録では、部位、傷病名、主訴、口腔内所見、症状、所見、診療方針、点数などの記載不備が指摘例として挙げられています。療担規則でも、保険医が患者を診療した場合に、診療に関する必要事項を遅滞なく診療録に記載することが確認できます。
院内点検では、診療録を「病名があるか」だけで見ない方がよいでしょう。傷病名の根拠、検査結果、治療方針、実施内容、患者説明、算定した点数がつながっているかを、症例単位で確認します。いわゆるレセプト病名のように、診療実態から説明しにくい病名が残っていないかも見直し対象です。
文書控えと添付資料の抜けを確認する
歯科疾患管理料、周術期等口腔機能管理、歯科衛生実地指導料、新製有床義歯管理料、クラウン・ブリッジ維持管理料などでは、管理計画書、情報提供文書、患者に提供した文書、管理報告書などの扱いが重要になります。
患者へ文書を渡した、説明した、管理を行ったという事実だけでは足りず、写しの添付、診療録への要点記載、作成日、対象患者、実施者、指示内容の整合が必要です。歯科衛生士が関わる業務では、歯科医師の指示内容、実施時間、指導内容、業務記録がつながっているかを確認してください。
算定頻度が高い項目から歯科指摘事項を点検する
全項目を網羅的に点検しようとすると、現場では続きません。まずは自院で頻度が高く、かつ記録要件が複数の職種にまたがる項目から確認します。
管理料と歯周病関連は優先度が高い
歯科疾患管理料では、初回の管理計画に必要な基本状況、口腔の状態、検査結果等の要点、治療方針の概要などが確認対象になります。歯周病に罹患している患者では、歯周病検査の結果を踏まえた治療方針を含む管理計画が重要です。
歯周病検査、歯周病安定期治療、歯周病重症化予防治療では、検査結果、動揺度、プラークチャート、出血の有無、ポケット深さ、医科からの文書など、算定根拠になる情報が複数あります。レセコン上の算定履歴だけでなく、検査票、画像、診療録、医科連携文書が同じ患者で追えるかを確認しましょう。
訪問歯科と画像診断は記録の粒度を見る
歯科訪問診療料では、第1回目の訪問診療時に、病状に基づく訪問診療計画の要点を診療録に記載するか、計画書の写しを添付することが確認ポイントになります。在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料でも、管理計画の要点が重要です。
画像診断では、撮影しただけでなく、診断に必要な部位が撮れているか、画像が診断に利用できるか、必要な所見が診療録に残っているかが問われます。デジタル画像を使う医院では、画像データの保存場所、診療録とのひも付け、所見記載のルールを院内でそろえる必要があります。
歯科技工・補綴・施設基準は請求との整合を見る
補綴や施設基準は、臨床側の記録、技工側の指示、事務側の届出・請求が分かれやすい領域です。今回の指摘事項を読むと、ここは院内の連携ミスとして起きやすいことが分かります。
歯科技工指示書と補綴記録をセットで確認する
歯科技工指示書では、設計、作成方法、使用材料、発行年月日、発行した歯科医師、医療機関所在地、歯科技工所所在地などの記載不備が指摘例として示されています。補綴時診断料では、製作予定部位、欠損部の状態、補綴物の名称や設計等の要点記載も確認対象です。
CAD/CAM冠では、適応基準、材料の名称、ロット番号等を記載した文書の保存・管理が関係します。歯科技工所や院内技工担当と連携して、技工指示書、材料シール、診療録、請求内容が同じ症例でそろうか確認してください。
施設基準・届出事項は最新状態に更新する
診療報酬の請求等に関する事項では、保険医の勤務形態、異動、氏名、標榜診療科目、診療時間、診療日、届出事項に係る辞退などの変更が指摘例として挙げられています。医療情報取得加算や医療DX推進体制整備加算では、電子情報処理組織を使用した診療報酬請求との関係も確認対象になります。
届出は「出したら終わり」ではありません。勤務医の異動、常勤・非常勤の変更、標榜や診療時間の変更、施設基準を満たす人員・設備の変更があった場合、管轄地方厚生局への届出や辞退が必要かを確認する運用が必要です。
院内で使える指摘事項チェックリスト
- 自院で算定している項目を、管理料、在宅、検査、画像、処置、補綴、矯正、施設基準に分けて一覧化する。
- 算定頻度が高い項目から、診療録、検査結果、画像所見、提供文書控え、技工指示書、レセプトを症例単位で照合する。
- 歯科衛生士が関わる指導や処置では、歯科医師の指示、実施内容、実施時間、業務記録、患者提供文書を確認する。
- 施設基準を伴う項目では、届出控え、人員、勤務形態、設備、研修、掲示、電子請求の状況を最新化する。
- 保険診療と保険外診療、患者への文書交付、一部負担金徴収について、説明文書と会計処理が一致しているか確認する。
確認順は「根拠、記録、文書、請求」
院内点検では、最初からレセプトだけを見ると抜けが残ります。まず算定根拠になる患者状態や検査結果を確認し、次に診療録記載、患者提供文書や添付資料、最後にレセプトの順で見ます。
たとえば歯科衛生実地指導料なら、対象患者、歯科医師の指示、指導内容、実施時間、情報提供文書、写しの保存、請求内容を一つの流れで確認します。歯周病関連なら、検査結果、治療方針、管理計画、再評価、医科連携文書、請求区分を同じ患者で追うと、形式的な点検で終わりにくくなります。
院内共有文例
院内ミーティングでは、次のように共有すると実務に落とし込みやすくなります。
「2026年7月16日に厚労省が令和7年度の歯科の主な指摘事項を掲載しました。新しい点数の追加ではありませんが、カルテ、文書控え、検査結果、技工指示書、レセプトの整合を確認する資料として使います。今月は、歯科疾患管理料、歯科衛生実地指導料、歯周病検査、訪問診療、補綴関連から優先して点検します。」
読むときの注意点と次に見る資料
今回の歯科指摘事項は、医院の自己点検に役立ちますが、個別症例の算定可否をこの資料だけで決めるものではありません。点数表、留意事項通知、施設基準通知、疑義解釈、管轄地方厚生局の案内とセットで確認する必要があります。
個別指導の資料を過度に一般化しない
PDF冒頭の注意書きどおり、指摘事項は当時の施設基準・算定要件等に基づく指導で、個別症例等を確認した結果として示されたものです。したがって、同じ項目名があるから必ず不適切、または記載が少し違うから必ず返還、とは読めません。
一方で、診療録や文書控えがない、算定した内容と診療録が一致しない、施設基準の届出内容が現状とずれているといった論点は、どの医院でも点検価値があります。資料は不安をあおるためではなく、説明できる診療録と請求に近づけるために使いましょう。
管轄地方厚生局と令和8年度資料を併せて見る
厚労省ページには、令和8年度版の「保険診療の理解のために:歯科」や保険診療確認事項リスト(歯科)も掲載されています。今回の指摘事項と併せて見ると、保険診療の基本、診療録、施設基準、レセプト、保険外負担までを横断的に確認できます。
実際の提出方法、定例報告、自己点検、地域ごとの案内は、医院所在地を管轄する地方厚生局で確認してください。特に8月の定例報告・自己点検、施設基準の届出変更、勤務医の異動、診療時間変更がある医院では、全国資料だけでなく管轄局ページを確認することが重要です。
FAQ
今回の指摘事項で歯科の算定要件が変わりましたか。
今回確認した資料は、令和7年度の特定共同指導・共同指導における主な指摘事項です。新しい点数や算定要件を追加する通知ではありません。自院の記録や請求を点検する資料として読むのが適切です。
すべての歯科医院が全項目を点検する必要がありますか。
全項目を同じ深さで点検する必要はありません。まずは自院で算定している項目、算定頻度が高い項目、施設基準や文書控えが関係する項目から確認するのが現実的です。
歯科衛生士の業務記録はどこから見直すべきですか。
歯科医師の指示内容、実施した指導や処置、実施時間、患者へ提供した文書、診療録との関係から見直します。歯科衛生士だけで完結させず、院長やレセプト担当と同じ患者単位で確認することが大切です。
指摘事項に載っていない項目は安全と考えてよいですか。
そうは言えません。今回のPDFは主な指摘事項の整理であり、すべての確認事項を網羅するものではありません。点数表、留意事項通知、施設基準通知、疑義解釈、保険診療確認事項リストと併せて確認してください。
出典
- 厚生労働省「過去の新着情報一覧」 https://www.mhlw.go.jp/stf/new-info/
- 厚生労働省「保険診療における指導・監査」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shidou_kansa.html
- 厚生労働省「令和7年度 特定共同指導・共同指導(歯科)における主な指摘事項」 https://www.mhlw.go.jp/content/001724669.pdf
- 厚生労働省「保険診療の理解のために:歯科(令和8年度)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001713153.pdf
- 厚生労働省「保険診療確認事項リスト(歯科)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001534264.pdf
- e-Gov法令検索「保険医療機関及び保険医療養担当規則」 https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=332M50000100015_20230401_505M60000100048
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