
歯科医院の引き継ぎマニュアル|受付・予約の手順を残す作り方
歯科医院の引き継ぎマニュアルは、操作の順番に加えて「何を確認したら次へ進めるか」を残すと実務で使いやすくなります。まずは予約の登録・変更・当日の受付など、担当者の交代で止まりやすい業務から作りましょう。
前任者の説明を録画しただけでは、必要な場面を探すのに時間がかかります。長い総合資料を作る前に、業務ごとに目的、開始条件、完了条件、相談先をまとめる方法を提案します。以下の書式は医院向けの作成例です。
引き継ぐ対象を「一つの仕事」で区切る
「受付業務」という大きな分類ではなく、「再診患者から電話で日時変更を受ける」程度まで具体化します。開始から終了までが追える単位にすると、抜けを発見しやすくなります。
対象を一覧にし、毎日行う仕事、月に数回の仕事、例外時の仕事に分けます。予約の登録だけを丁寧に書いても、変更後の通知や、保留中の折り返しが抜けていれば引き継ぎは完了しません。前任者の一日の動きと、直近の問い合わせ記録を照らして棚卸しします。
患者の実名入りメモをそのまま教材へ移すことは避け、手順の説明には架空の情報を使います。実案件を引き継ぐ場合は、教材とは別の管理場所に記録し、閲覧できる職員を限定する設計にします。
画面手順と判断基準を二段に分ける
画面の説明には、使うメニュー、入力する項目、保存後に確認する場所を書きます。判断基準には、担当者や診療内容を勝手に変えない条件、確認が必要な変更、予約確定を伝えるタイミングを書きます。
項目 | 予約変更業務の記入例 |
|---|---|
開始条件 | 本人確認が済み、変更希望を受けた |
元の情報 | 元日時、担当者、診療内容、必要時間を確認 |
操作 | 候補を確認し、院内で定めた手順で変更 |
判断が必要な場面 | 診療内容・担当・時間幅も変わる場合は責任者へ |
完了条件 | 新日時を復唱し、元枠と変更後の状態を確認 |
残す記録 | 対応者、受付日時、伝えた内容、保留事項 |
スクリーンショットは画面全体を何枚も並べず、見分けるべき項目へ説明を添えます。画面変更で使えなくなる部分と、画面が変わっても残る判断基準を分ければ、改訂する範囲も明確になります。
例外対応には「止める条件」を書く
例外をすべて覚えさせる必要はありません。「通常の手順を続けない条件」と「誰へ何を伝えるか」を書きます。患者の申告と予約情報が食い違う、家族からの変更依頼で対応範囲が不明、診療上の相談が含まれる場合などです。
例えば、「家族です」と言われたときは、その場で既存予約の詳細を読み上げるのではなく、医院で定めた確認手順へ進む、と記載します。症状や処置の可否は受付だけで決めず、歯科医師等への確認につなげます。
申し送りには「確認待ち」だけでなく、問い合わせ先、返答を待つ事項、患者への連絡予定を残します。相談先が不在のときの代替担当も記載し、前任者の私用連絡先だけに頼らない形にします。
初めて読む人に一件だけ再現してもらう
完成した資料は、作成者以外が架空の予約で試します。評価するのは読む速さよりも、迷った場所です。「このボタンはどこか」「ここで保存してよいか」と質問が出た箇所に説明を追加します。
説明中に口頭で補った内容は、その日のうちに書き戻しましょう。教えた人が毎回補足しなければ使えない資料には、まだ前提が抜けています。読めば完了できる通常業務と、必ず相談する例外業務の両方を一度試すと確認しやすくなります。
更新責任と閲覧場所を決める
資料の冒頭には責任者、版番号、改訂日、変更点を記載します。最新版を一か所に置き、旧版は誤って参照しない状態へ移します。紙を併用する場合は、差し替えの担当と確認日も決めます。
個人情報を扱う手順は院内の規程と整合させてください。医療・介護の個人情報ガイダンスは、医療資格者以外を含む従業者の監督や教育研修を示しています。マニュアルの配布をもって監督が終わるわけではありません。
引き継ぎ完了のチェックリスト
完了判定には、資料の有無だけでなく、未完了案件を誰が引き受けたかも含めます。
- 通常の登録・変更・取消しを架空データで再現できた
- 診療判断が必要な場面の相談先を示せた
- 保留案件に担当者と次の確認時点がある
- 紙の資料、共有フォルダ、アカウントの所在を確認した
- 退職・異動に伴う権限変更を管理担当者へ依頼した
引き継ぎ後も質問を記録し、同じ質問が続く箇所から改訂します。質問の多さを本人の能力だけに結び付けず、資料の不足として検討する運用が役立ちます。
よくある質問
動画だけで引き継げますか?
画面の動きには動画が便利ですが、相談先や例外条件は文章でも探せるようにします。動画の内容をすべて書き起こすより、業務名と重要な判断を索引にすると参照しやすくなります。
忙しくて一冊にまとめられません。
予約変更など一業務を一枚にするところから始められます。作った一枚を試し、不足を直してから他の業務へ広げます。
パスワードも手順書へ書きますか?
共通の手順書には書かず、医院のアカウント管理方法に従います。IPAの手引きもID・パスワードを共有しない運用を確認事項に挙げています。
出典
- 個人情報保護委員会・厚生労働省:医療・介護関係事業者向けガイダンス(2026年10月21日確認)
- IPA:クラウドサービス安全利用の手引き(2026年10月21日確認)
Selectdays カスタマーサクセス担当
Selectdaysの実運用のサポートを担当しています。店舗のDX化に関するお悩み解決のノウハウを発信します。
