
インボイス7割控除、歯科技工外注で確認する3点
国税庁の令和8年度税制改正資料により、インボイス発行事業者以外からの課税仕入れに使う経過措置は、2026年10月1日から「仕入税額相当額の70%」へ変わりました。2026年9月30日までは80%だったため、未登録の歯科技工所や個人事業者等へ外注する歯科医院では、会計区分の切り替え確認が必要です。
ただし、すべての歯科医院が一律に同じ影響を受けるわけではありません。主に確認が必要なのは、課税事業者として原則課税で申告し、インボイス未登録先から課税仕入れを行っている医院です。免税事業者、簡易課税の医院、取引先が登録済みの場合は扱いが異なります。
最初に、自院の申告方式、取引先の登録番号、10月前後の役務完了日・納品日を確認してください。この記事では、インボイス7割控除の対象、歯科技工外注で迷いやすい日付、帳簿・請求書の確認順を整理します。
3行要約
- インボイス未登録先からの対象課税仕入れは、2026年10月1日から仕入税額相当額の70%控除へ変わりました。
- 主な確認対象は、原則課税で未登録の歯科技工所等と取引する課税事業者の歯科医院です。
- 歯科技工のような役務は原則として完了日で割合を判定し、会計区分と保存書類を見直します。
インボイス7割控除は何が変わったか
変わったのは、免税事業者などインボイス発行事業者以外から課税仕入れをしたとき、経過措置として控除できる割合です。支払額そのものの70%ではなく、「仕入税額相当額の70%」である点が重要です。
2026年10月1日に8割から7割へ
国税庁の現行資料では、経過措置の割合は次のように定められています。
課税仕入れの時期 | 控除できる割合 |
|---|---|
2023年10月1日~2026年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
2026年10月1日~2028年9月30日 | 仕入税額相当額の70% |
2028年10月1日~2030年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
2030年10月1日~2031年9月30日 | 仕入税額相当額の30% |
2031年10月1日以降 | 控除不可 |
医院側では、会計ソフトや税理士への提出資料に残っている「80%控除対象」の区分を、そのまま10月以降へ使わないことが第一歩です。
古い資料の「10月から5割」は改正前の予定
以前の制度説明には「2026年10月から50%」と書かれたものがあります。しかし、令和8年度税制改正で引下げ幅と期間が見直され、現行ルールは2026年10月から70%です。
院内マニュアル、顧問先から過去にもらった資料、歯科技工所との案内文が古いままなら、国税庁の令和8年度税制改正特集とQ&A問113へ差し替えます。
インボイス7割控除の対象になる歯科医院
医院名や診療科だけでは対象を判断できません。自院の消費税申告方式と、取引先・取引内容を組み合わせて確認します。
原則課税で未登録先から課税仕入れをする医院
主な確認対象は、課税事業者が原則課税で申告し、インボイス未登録の取引先から課税仕入れをするケースです。歯科医院では、未登録の歯科技工所や個人事業者への外注、物品・サービスの購入などが確認候補になります。
ただし、保険診療を含む歯科医院では、課税売上と非課税売上、仕入れの用途区分、課税売上割合によって実際の控除額が変わり得ます。「外注費の税相当額×70%がそのまま最終控除額」とは限りません。
影響が同じではないケース
次のケースは、同じ見方をしないよう注意します。
- 自院が免税事業者で、消費税の仕入税額控除を計算しない
- 簡易課税を選択し、売上税額とみなし仕入率で納付税額を計算する
- 取引先がインボイス登録済みで、適格請求書の保存要件を満たす
- 取引が課税仕入れに当たらない、または別の特例が適用される
- 課税売上と非課税売上が混在し、個別対応方式など別の計算が必要になる
判断に迷う場合は、医院の申告方法と取引の実態を顧問税理士へ伝えて確認します。
歯科技工外注は10月前後の日付に注意
80%か70%かは、単に請求書の日付や支払日だけで決まりません。国税庁Q&A問113-3は、経過措置の割合を「課税仕入れの時期」で判断すると説明しています。
役務は原則として全部が完了した日で判定
役務の提供を受ける取引は、原則として約束した役務の全部が完了した日が課税仕入れの時期です。国税庁の例では、9月21日から受けた役務が10月20日に完了し、10月31日に支払う場合、10月20日を基準に70%を使います。
歯科技工外注を役務として処理する取引では、9月依頼か10月支払かだけでなく、契約上の完了、納品、検収の扱いを確認する必要があります。個別取引を一律に役務と断定せず、契約と経理処理を税理士等へ確認してください。
商品は原則として引渡日で判定
商品の仕入れなど資産の譲受けは、原則として引渡日で判定します。9月30日までの引渡しは80%、10月1日以降の引渡しは70%という切り分けです。
月締め請求書に9月分と10月分が一緒に載る場合は、明細ごとの完了日・引渡日が追える状態にしておくと、区分誤りを防ぎやすくなります。
7割控除を金額例で確認する
7割控除の意味を、標準税率10%の対象取引で単純化して確認します。これは経過措置部分だけの例で、歯科医院の最終的な控除額を示すものではありません。
税込11万円なら経過措置部分は7,000円
インボイス未登録先への対象課税仕入れが税込11万円なら、仕入税額相当額は1万円です。2026年9月30日までの80%では8,000円、2026年10月1日以降の70%では7,000円が、経過措置上のみなし仕入税額です。差は1,000円です。
実際には、課税売上割合、用途区分、端数処理などで最終計算が変わり得ます。会計ソフトで金額を直接修正する前に、設定と仕訳ルールを確認します。
取引価格や診療報酬が自動で変わる制度ではない
割合変更は消費税申告上の仕入税額控除に関するものです。未登録の歯科技工所への支払額を自動で10%下げるルールでも、患者負担や診療報酬が自動的に変わる仕組みでもありません。
取引条件を見直す場合は、税制変更だけを理由に一方的な価格変更を行わず、契約、取引適正化、相手方との協議を別途確認します。
歯科医院のインボイス確認チェックリスト
- 自院が免税・簡易課税・原則課税のどれかを確認する
- 歯科技工所など主要外注先のインボイス登録番号と有効性を確認する
- 2026年9月と10月をまたぐ取引の完了日・引渡日・検収日を確認する
- 会計ソフトの「80%控除対象」が10月以降「70%控除対象」へ切り替わるか確認する
- 帳簿に経過措置対象である旨を記載し、必要事項のある請求書等を保存する
- 課税売上割合や用途区分を含む最終処理を税理士等へ確認する
チェックは、院長が税制を細部まで判断するためではなく、経理担当者や税理士へ渡す情報をそろえるために行います。
帳簿には経過措置対象である旨が必要
国税庁Q&A問113は、通常の帳簿記載事項に加えて、経過措置の適用対象である旨の記載を求めています。個別取引に「70%控除対象」「免」などと記載する方法や、記号と凡例を組み合わせる方法が示されています。
請求書等には、作成者名、取引年月日、取引内容、税率ごとの税込価額、交付を受ける事業者名など、区分記載請求書等と同様の事項が必要です。
1億円上限は開始する課税期間にも注意
一のインボイス未登録事業者からの対象課税仕入れが年・事業年度で税込1億円を超える場合、超過部分には経過措置を適用できない制限があります。この1億円基準は、2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
一般的な歯科医院で直ちに該当するとは限りませんが、大規模法人や関連事業を含む場合は取引先別集計を確認します。
よくある質問
すべての歯科医院で控除額が8割から7割になりますか
いいえ。自院の課税区分、申告方式、取引先の登録状況、取引内容で変わります。特に免税事業者や簡易課税の医院は、原則課税と同じ処理ではありません。
9月に発注して10月に支払えば8割ですか
支払日だけでは判断できません。役務は原則として全部の完了日、商品は原則として引渡日で判断します。歯科技工外注の契約・納品・検収の扱いは個別に確認してください。
古い資料に「2026年10月から5割」とあります
それは令和8年度税制改正前の予定です。現行ルールは2026年10月1日から2028年9月30日まで70%です。国税庁の令和8年度税制改正特集とQ&A問113を優先してください。
出典
[1] 国税庁「令和8年度税制改正特集」7・5・3割控除
該当箇所: 7・5・3割控除、控除可能割合、1億円上限
[2] 国税庁「インボイス制度に関するQ&A 問113 免税事業者等からの仕入れに係る経過措置」令和8年4月改訂
該当箇所: p.1~2、控除割合、帳簿・請求書等の保存要件
[3] 国税庁「インボイス制度に関するQ&A 問113-3 令和8年10月1日前後の取引に係る免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の適用」令和8年4月追加
該当箇所: p.1、役務完了日と商品引渡日による判定
[4] 財務省「令和8年度税制改正 政令」2026年3月31日
該当箇所: 所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)の施行に伴う関係政令
※本記事は一般的な制度整理です。個別の申告・仕訳・契約判断は、顧問税理士などの専門家へ確認してください。
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