
歯科医療費2.4%増、医院が見るべき3指標
厚生労働省は2026年9月30日、「最近の歯科医療費(電算処理分)の動向」の令和8年度4~5月号を公表しました。歯科医療費は前年同期比2.4%増でしたが、受診延日数は1.0%減り、1日当たり医療費は3.5%増えています。
院長が見るべきなのは「医療費が増えた」という一行だけではありません。全国の医療費増は、患者の来院日数が増えた結果ではなく、受診延日数が減る一方で1日当たり医療費が伸びた中で生じています。個別医院の売上や患者数が同じ割合で増えたことを示す統計でもありません。
また、対象は2026年4~5月です。診療報酬本体と材料の令和8年度改定は6月1日施行なので、今回の数値を改定効果と説明することはできません。この記事では、歯科医療費・受診延日数・1日当たり医療費の3指標を、自院の月次確認へ落とす方法を整理します。
3行要約
- 令和8年度4~5月の歯科医療費(電算処理分)は前年同期比2.4%増、受診延日数は1.0%減でした。
- 1日当たり医療費は3.5%増えており、「医療費増=来院日数増」とは読めません。
- 対象は6月1日の診療報酬改定前です。自院では4~5月と6月以降を分けて比較します。
歯科医療費2.4%増を3指標で読む
結論は、医療費・受診延日数・1日当たり医療費をセットで見ることです。今回の全国集計は、金額、利用量、1日当たり水準が同じ方向には動いていません。
医療費は5,849億円、前年同期比2.4%増
電算処理分の歯科医療費は4~5月合計で5,849億円でした。前年同期比は2.4%増で、4月単月は3.8%増、5月単月は1.0%増です。医療機関種類別では、歯科診療所が2.6%増、歯科病院は0.0%減とされています。
ただし、全国医療費の伸び率を自院の売上目標へそのまま置き換えることはできません。地域、患者年齢、保険種別、診療内容、休診日、施設基準などが医院ごとに異なるためです。
受診延日数は1.0%減、1日当たり医療費は3.5%増
受診延日数は6,555万日で前年同期比1.0%減でした。一方、1日当たり医療費は8.9千円で3.5%増えています。件数は4,404万件で2.0%増、1件当たり日数は3.0%減です。
つまり、レセプト件数は増えても、1件の中で受診した日数は短くなり、延べの受診日数は減っています。全国医療費が増えた背景を来院数だけで説明せず、診療内容や1日当たり点数の変化も確認する必要があります。
診療内容別の歯科医療費は伸び方が違う
診療内容別では、すべてが一様に増えたわけではありません。自院との比較では、伸び率だけでなく、自院でその診療内容が占める割合も併せて見ます。
医学管理・検査・処置はプラス
前年同期比は、医学管理5.4%増、検査・病理診断5.6%増、処置4.1%増、在宅3.9%増でした。これらは全国集計の変化であり、個別医院で同じ伸びが期待できるという意味ではありません。
自院で確認するときは、各区分の総点数、算定件数、患者構成を前年同期と比べます。総点数だけが増えた場合と、件数も一緒に増えた場合では、現場で起きていることが違います。
初診は減少、補綴は小幅増
初診は1.8%減、歯冠修復及び欠損補綴は0.4%増でした。なお、NDB上の「歯冠修復及び欠損補綴」には技術料と材料料が合算され、歯科用貴金属等の特定保険医療材料も同区分に計上されます。
そのため、補綴の医療費変化を症例数の増減だけで判断するのは適切ではありません。自院では補綴の件数、材料構成、1件当たり点数を分けて確認します。
今回の歯科医療費は診療報酬改定前のデータ
今回の4~5月分は、令和8年度診療報酬改定の影響を見るデータではありません。厚労省は診療報酬本体と材料を2026年6月1日施行としています。
4~5月を改定効果と結び付けない
4~5月の医療費や診療内容別の伸びを「改定で増えた」と説明すると、対象期間と施行日が逆転します。今回の統計は、むしろ改定直前の比較基準として保存しておく価値があります。
6月以降は改定前後を分けて確認する
自院の月次資料では、4~5月を改定前、6月以降を改定後として分けます。前年同月比に加え、2026年4~5月平均と6月以降の差を見るときも、診療日数、患者構成、届出時期の違いを注記します。
電算処理分と全数の違いに注意
主表の5,849億円は、レセプト電算処理システムで処理された歯科入院・入院外分です。参考表の全数は5,930億円で前年同期比2.1%増でした。
電算化率は医療費ベース98.6%
今回の電算処理分は全数の98.6%です。全国動向を把握するうえでカバー率は高い一方、「全数」と「電算処理分」は同じ値ではありません。記事や院内資料で引用するときは、どちらの数値かを明記します。
全国平均と自院実績は目的が違う
全国統計は外部環境の目安、自院データは経営と業務改善の判断材料です。全国平均との差だけで良し悪しを決めず、診療日数、地域特性、診療構成をそろえて比較します。
歯科医院が月次で確認する3指標
- レセプト総点数・保険診療収入が前年同期から何%変わったか。
- 延べ来院日数とレセプト件数がそれぞれ何%変わったか。
- 1日当たり点数と1件当たり日数がどう変わったか。
この3段階で見ると、「患者数の変化」「通院回数の変化」「診療内容・点数構成の変化」を混同しにくくなります。可能なら初診、医学管理、処置、検査、在宅、補綴を追加して確認します。
自院KPIへの置き換え表
全国統計 | 自院で見る数字 | 読み違えを防ぐ確認 |
|---|---|---|
歯科医療費 | レセプト総点数、保険診療収入 | 自費収入を混ぜず、前年同期と同じ範囲で比較 |
受診延日数 | 延べ来院日数 | 診療日数・休診日の差を注記 |
件数 | レセプト件数 | 新患数や実人数と同一視しない |
1日当たり医療費 | 1日当たり点数 | 診療内容と患者構成を確認 |
1件当たり日数 | レセプト1件当たり来院日数 | 治療完結や中断を直接示す指標ではない |
月次会議での確認順
まず総点数、次に延べ来院日数、最後に1日当たり点数を見ます。差が大きければ件数と1件当たり日数へ進み、さらに診療内容別へ分解します。6月以降は「改定後」とラベルを付け、4~5月と同じ表に混ぜる場合でも境界を明示します。
よくある質問
歯科医療費が2.4%増えたなら患者数も増えていますか
そうとは限りません。今回、受診延日数は1.0%減る一方、件数は2.0%増、1日当たり医療費は3.5%増でした。患者実人数はこの主要指標だけでは分かりません。
自院の売上も2.4%増が目安ですか
全国の保険歯科医療費の集計であり、個別医院の目標値ではありません。自費、地域、患者構成、診療内容、診療日数をそろえた自院の前年同期比を優先してください。
令和8年度診療報酬改定の影響は含まれますか
診療報酬本体・材料は2026年6月1日施行です。今回の対象は4~5月なので、改定後の影響を示す統計としては扱えません。6月号以降を確認する必要があります。
出典
[1] 厚生労働省「最近の歯科医療費(電算処理分)の動向(令和8年度4~5月号)」2026年9月30日、概要・表I-1、I-2、I-4、II-1、VII-1、参考表
[2] 厚生労働省「医科・歯科・調剤医療費の動向調査:統計の概要」調査対象・集計方法
[3] 厚生労働省「医科・歯科・調剤医療費の動向調査:用語の解説」医療費・診療内容別の定義
[4] 厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年4月)」2026年3月31日、診療報酬本体・材料の施行日
Selectdays カスタマーサクセス担当
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