
36協定相談強化、歯科医院の残業確認点
厚生労働省は2026年8月19日、時間外労働等に係る相談・支援と労働基準監督署の対応を2026年9月1日から見直すと公表しました。歯科医院にとっての要点は、残業規制が緩くなる話ではなく、36協定や特別条項、健康確保措置の運用を相談しやすくなる一方で、実際に措置を行っているかを説明できる状態にしておくことです。
歯科医院では、診療後の片付け、滅菌、予約調整、レセプト、訪問歯科の移動や記録などで、月末や欠員時に残業が集中しやすくなります。常勤スタッフだけでなく、パート、歯科衛生士、受付・助手、法人内の複数診療所で働く職員も含め、実態に合う労働時間管理が必要です。
この記事では、2026年9月1日以降に何を確認すべきかを、歯科医院の院長・事務長向けに、36協定、特別条項、勤怠記録、健康確保措置、相談窓口の順で整理します。
3行要約
- 厚労省は2026年9月1日から、36協定や特別条項に関する専門相談窓口と訪問支援を強化します。
- 労基署対応は、時間数だけで一律に月45時間以内を求める指導から、36協定上の健康確保措置の実施状況確認を重視する方向です。
- 歯科医院は、法定上限が緩和されたと考えず、勤怠実績、特別条項の理由、面談・休息・業務調整の記録を棚卸ししてください。
36協定相談強化で変わること
今回の公表は、2026年9月1日から全国の働き方改革推進支援センターと労働基準監督署で実施される相談・支援の見直しです。歯科医院が最初に見るべき点は、専門相談窓口と訪問支援が36協定・特別条項の運用に向くことです。
専門相談窓口は36協定と特別条項を支援する
厚労省資料では、全国の働き方改革推進支援センターに、36協定や特別条項の締結、柔軟な労働時間制度の活用を支援する専門相談窓口を設けるとしています。歯科医院では、診療日・休診日・訪問歯科・レセプト時期の波があるため、単に「残業を減らす」だけでなく、どの業務にどの時間制度を使うのかを整理する必要があります。
アウトリーチ型の訪問支援も対象になる
働き方改革推進支援センターと労働基準監督署の労働時間相談・支援班がチームとなり、36協定や特別条項に関するアウトリーチ型の訪問支援を行うことも示されています。小規模な歯科医院では、人事労務の専任者がいないことが多いため、就業規則、勤怠集計、協定届の整合性を外部支援で点検する選択肢が増えます。
歯科医院が誤解してはいけない点
今回の見直しは、法定労働時間や36協定の上限をなくすものではありません。労働基準法上の枠組み、36協定の締結・届出、割増賃金、過重労働防止の確認は引き続き必要です。
月45時間・年360時間の原則は残る
厚労省の労働時間ルールでは、36協定により延長できる時間は原則として月45時間、年360時間と説明されています。e-Gov法令検索で確認できる労働基準法第36条も、限度時間や特別条項の枠を定めています。したがって、今回の見直しを理由に、協定の範囲外で残業させてよいとは読めません。
一律指導の見直しは健康確保措置の軽視ではない
厚労省は、労基署における対応について、時間外・休日労働時間数のみに着目して1か月45時間以内への削減を求める一律の指導を見直すとしています。一方で、各事業場が36協定で定める健康及び福祉を確保するための措置の実施状況を重点的に確認し、過重労働による健康障害のおそれが高い場合には引き続き必要な指導を行う、とも明記しています。
歯科医院で優先して確認する労務項目
- 36協定の有効期間、対象職種、延長時間、休日労働、特別条項の有無を確認する。
- 診療後業務、滅菌、レセプト、訪問歯科、研修、院内会議が勤怠上どのように記録されているか確認する。
- 特別条項を使う場合の理由、回数、上限、労使手続き、健康確保措置を確認する。
- 残業が多い職員への面談、勤務間インターバル、代休、業務分担変更などの実施記録を残す。
- 36協定届や就業規則届の電子申請導線を確認し、次回届出の担当者と期限を決める。
このチェックは、労務担当だけで完結させず、院長、事務長、チーフ歯科衛生士、受付責任者が同じ前提で見るのが実務的です。勤怠データと現場の業務実態がずれていると、36協定の上限管理だけでなく、給与計算やスタッフ説明にも影響します。
診療後業務を「残業の理由」として分解する
歯科医院では、診療終了後に滅菌、ユニット清掃、翌日準備、技工物確認、カルテ記載、予約変更対応が重なります。残業時間だけを見ても原因は分からないため、どの業務がどの曜日・職種に集中しているかを分けて記録してください。36協定や特別条項の相談でも、業務の内訳がある方が具体的な支援につながります。
パート職員も労働時間管理の対象になる
短時間勤務の歯科衛生士や受付スタッフでも、法定労働時間、休憩、割増賃金、休日労働の考え方は無関係ではありません。夕方以降の予約集中、急患対応、学校検診や訪問歯科の同行などで勤務時間が伸びる場合は、雇用形態ごとの勤怠ルールと実績を照合します。
36協定 歯科医院向けの判断表
今回の見直しを、歯科医院の行動に落とすと次のように整理できます。法令判断は個別事情で変わるため、迷う場合は所轄労働基準監督署や働き方改革推進支援センターに確認してください。
対応区分を院内で分ける
状況 | 医院の扱い | 最初の確認 |
|---|---|---|
36協定を締結・届出済みで、実績も協定内 | 継続管理 | 有効期間、対象職種、月次集計、健康確保措置の記録 |
月末や欠員時に45時間へ近づく職員がいる | 要確認 | 業務原因、シフト調整、面談、休息、特別条項の必要性 |
特別条項付き36協定を使っている | 重点確認 | 臨時的な事情、回数、上限、労使手続き、健康確保措置 |
36協定がないまま法定時間外労働がある | 早急に相談 | 実態把握、協定締結、届出、勤怠・給与処理の見直し |
勤怠記録と実際の退勤時刻が合わない | 是正優先 | 打刻ルール、残業申請、診療後業務、管理者承認の実態 |
相談窓口を使う前に準備する資料
- 直近3か月から6か月分の勤怠集計表を用意する。
- 現在の36協定届、就業規則、雇用契約書、シフト表をそろえる。
- 残業が増える時期と理由を、レセプト、欠員、急患、訪問歯科、研修などに分ける。
- 健康確保措置として実施している面談、勤務調整、休暇取得、業務分担変更の記録を確認する。
- 法人で複数医院を運営している場合は、医院ごとの事業場単位と本部管理の範囲を整理する。
働き方改革推進支援センターは、全ての事業主が利用でき、社会保険労務士などの専門家による無料相談や訪問相談を案内しています。36協定について詳しく知りたい、就業規則を見直したい、人手不足に対応したいといった相談も例示されています。
電子申請の導線も合わせて確認する
厚労省は、36協定、1年単位の変形労働時間制に関する協定、就業規則届について、労働条件ポータルサイトから電子申請できる案内を掲載しています。次回の36協定更新時に、紙で出すのか電子申請に切り替えるのか、提出先と担当者を先に決めておくと、年度末の処理が詰まりにくくなります。
よくある質問
今回の見直しで、歯科医院の残業上限は緩和されますか
現時点の公表資料からは、36協定の法定上限そのものが緩和されたとは読めません。相談支援の充実と労基署対応の見直しが主な内容であり、協定の範囲、特別条項、健康確保措置、割増賃金の確認は引き続き必要です。
スタッフが少ない医院でも働き方改革推進支援センターを使えますか
厚労省の案内では、支援対象は全ての事業主とされています。小規模な歯科医院でも、36協定、就業規則、賃金規定、助成金、人手不足などについて相談候補になります。
労基署から確認されたとき、何を見られやすいですか
今回の厚労省発表では、36協定で定める健康及び福祉を確保するための措置の実施状況を重点的に確認するとされています。勤怠時間だけでなく、面談、勤務調整、休息、業務分担変更などを実施した記録を説明できるようにしておくことが重要です。
出典
[1] 時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します|厚生労働省|2026年8月19日
該当箇所: 2026年9月1日からの相談支援、専門相談窓口、訪問支援、労基署対応見直し。
[2] 働き方改革推進支援センターのご案内|厚生労働省
該当箇所: 支援対象、36協定相談、個別相談、訪問支援、セミナー。
[3] 労働条件・職場環境に関するルール|厚生労働省
該当箇所: 法定労働時間、36協定、原則月45時間・年360時間、割増賃金。
[4] 労働基準法等の規定に基づく届出等の電子申請について|厚生労働省
該当箇所: 36協定等の電子申請案内。
[5] 労働基準法|e-Gov法令検索
該当箇所: 第36条、時間外・休日労働協定、限度時間、特別条項。
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