
無歯科医地区等調査延期、地域歯科の確認点
厚生労働省の新着情報では、2026年5月29日に「無歯科医地区等調査」が掲載されました。ただし、2026年6月4日時点で押さえるべき結論は、令和7年度調査の新しい地区数や人口が確定公表されたという話ではありません。厚生労働省の調査ページでは、令和7年度調査について、2026年5月頃までに公表する予定だったものの、数値の精査に時間を要しているため公表を延期すると示されています。
歯科医院や地域歯科関係者は、最新値を先取りして語らず、令和4年度結果を暫定の基礎資料として扱うのが安全です。そのうえで、訪問歯科、病院歯科、障害児・者歯科、自治体事業、地域歯科医師会との連携を、自院がどこまで担えるか整理しておく必要があります。
無歯科医地区等調査で何が更新されたか
今回の更新で重要なのは、公表延期そのものを正確に読むことです。新しい結果が出たと誤解すると、地域説明や院内資料で未確定の数字を使ってしまうおそれがあります。
令和7年度調査は公表延期
厚生労働省の「無歯科医地区等調査」ページでは、令和7年度調査について、2026年5月頃までに公表予定だったが、数値の精査に時間を要しているため公表を延期すると案内されています。公表予定は決まり次第ホームページに掲載予定とされており、2026年6月4日時点で新しい確定値は確認できません。
したがって、地域歯科の説明では「令和7年度結果が出た」とは書かず、「令和7年度結果は延期中」と扱う必要があります。特に、自治体、歯科医師会、地域包括支援センターなどと共有する資料では、調査年度と公表状況を明記することが大切です。
調査はへき地歯科保健医療体制の基礎資料
この調査は、全国の無歯科医師地区等の実態と歯科医療確保状況を把握し、へき地歯科保健医療体制を整えるための基礎資料です。診療報酬の算定要件を直接変える通知ではありませんが、地域の歯科アクセスを考えるうえでは重要な公的統計です。
前回の令和4年度結果で見るべき数字
最新結果が延期されている間は、前回の令和4年度結果を基準にします。ここで大事なのは、全国値の増減だけでなく、自院の地域で何が課題になりそうかを考えることです。
無歯科医地区数と人口は前回調査から増加
令和4年度調査では、調査時点は2022年10月末日です。無歯科医地区数は784地区で、令和元年10月末日の777地区から7地区増加しました。無歯科医地区人口は188,647人で、令和元年の178,463人から10,184人増加しています。
一方で、同じ報道発表では無医地区数は減少傾向が続いていると整理されています。歯科では地区数・人口が増えているため、医科のへき地対策と同じ見方だけでは足りません。歯科特有の訪問診療、口腔機能管理、補綴、予防、障害児・者歯科への対応を含めて地域課題を見る必要があります。
数字は全国平均ではなく地域課題に落とす
無歯科医地区の数字は、単に「医院が少ない地域」を示すだけではありません。交通事情、地形、人口構成、在宅療養者の分布、施設入所者の口腔管理、地域の歯科医師の年齢構成などが重なって、歯科医療にアクセスしにくい状況を示す手がかりです。
歯科医院では、自院の近隣に無歯科医地区があるかだけでなく、患者の移動手段、訪問可能範囲、病院歯科や行政との連携先、休日や緊急時の相談ルートを確認すると、統計を実務に変換しやすくなります。
歯科医院が今確認したいこと
公表延期中に医院が行うべきことは、最新値を待つだけではありません。地域で歯科アクセスが弱い患者を、どの経路で診療につなげるかを先に整理しておくことです。
訪問歯科と地域連携の対応範囲を棚卸しする
まず、自院が対応できる訪問範囲、診療曜日、対象患者、対応できる処置、紹介が必要な症例を一覧化します。たとえば、義歯調整は訪問で対応できるが外科処置は病院歯科へつなぐ、摂食嚥下や栄養課題は多職種と連携する、といった線引きを明確にします。
無歯科医地区等の支援では、診療所単独で完結しないケースが多くなります。病院歯科、地域包括支援センター、介護施設、保健所、市町村、歯科医師会との連絡先を院内で共有しておくと、地域から相談を受けたときに動きやすくなります。
患者説明では「通えない理由」を責めない
無歯科医地区の問題は、患者が受診を怠っているという話ではありません。交通手段、地形、介護状況、家族支援、経済的負担など、受診を難しくする要因が重なります。患者説明では「来院できないなら訪問歯科や地域相談につなぐ」という姿勢が重要です。
受付や歯科衛生士が聞き取る項目として、移動手段、付き添いの有無、義歯や口腔清掃の困りごと、食事の困難、訪問診療の希望を整理しておくと、地域支援につなげやすくなります。
令和8年度の支援事業とどうつなぐか
令和7年度調査の最新値は未公表ですが、令和8年度の歯科医療提供体制構築支援事業では、無歯科医地区等への対策がテーマ例として示されています。地域側は、統計と支援事業を分けずに見る必要があります。
無歯科医地区等の歯科医療確保がテーマ例
令和8年度歯科医療提供体制構築支援事業の公募要領では、歯科医療機関の機能分化・連携の推進の例として、無歯科医地区等における歯科医療確保対策、歯科医師育成支援が挙げられています。事業は地域の歯科医療関係者や行政関係者と連携し、地域に展開・活用できる体制で、PDCAサイクルに沿って行うものとされています。
つまり、最新調査が出るまで何もしないのではなく、地域課題、関係者、対応可能な診療機能を先に整理することが、採択後の事業参加や地域連携に役立ちます。
個別診療所は協力できる機能を明確にする
この支援事業は、個別診療所だけが単独で動く補助金として読むより、地域の実施主体が歯科提供体制を組み立てる枠組みとして読むのが自然です。診療所側は、応募主体でなくても、自院が協力できる機能を明確にできます。
具体的には、訪問歯科の受け入れ、障害児・者歯科の相談、病院歯科への紹介、地域研修への参加、行政事業への協力、口腔機能低下や摂食嚥下に関する多職種連携などを棚卸しします。地域から協力依頼が来てから考えるより、先に対応範囲を決めておく方が実務は速くなります。
よくある疑問
無歯科医地区等調査は統計資料ですが、地域歯科の実務では誤解が起きやすい資料でもあります。ここでは医院側で迷いやすい点を整理します。
令和7年度の新しい地区数はもう使えますか
使えません。2026年6月4日時点では、厚生労働省が令和7年度調査の公表延期を案内しており、新しい確定値は確認できません。記事、院内資料、地域向け説明では、令和4年度結果と令和7年度公表延期を分けて書く必要があります。
この調査で診療報酬や施設基準が変わりますか
この調査自体は、診療報酬の算定要件や施設基準を直接変更する通知ではありません。ただし、へき地歯科保健医療体制や地域歯科医療提供体制を考える基礎資料であり、支援事業や自治体施策の検討材料になります。
都市部の歯科医院には関係ありませんか
無関係とは言えません。無歯科医地区そのものが近隣にない都市部でも、病院歯科との後方支援、訪問歯科、介護施設、障害児・者歯科、多職種連携の受け皿として地域から役割を求められることがあります。自院が担える範囲を整理しておくことは有用です。
次に何を確認すべきですか
まず厚生労働省の無歯科医地区等調査ページで令和7年度結果の公表予定を確認します。あわせて、令和8年度歯科医療提供体制構築支援事業、自治体や歯科医師会の地域事業、訪問歯科や病院歯科との連携情報を確認するとよいでしょう。
出典
- 厚生労働省「新着情報」2026年5月29日掲載 https://www.mhlw.go.jp/stf/new-info/
- 厚生労働省「無歯科医地区等調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/77-16.html
- 厚生労働省「無歯科医地区等調査:調査の概要」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/77-16a.html
- 厚生労働省「令和4年度無医地区等及び無歯科医地区等調査の結果を公表します」2023年7月28日 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33299.html
- 厚生労働省「令和8年度歯科医療提供体制構築支援事業実施団体の公募について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72777.html
- 厚生労働省「令和8年度 歯科医療提供体制構築支援事業 公募要領」 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001694377.pdf
- 厚生労働省「へき地医療について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20900.html
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