医療介護情報連携、歯科医院の準備ポイント
厚生労働省は2026年7月23日付で、健康・医療・介護情報利活用検討会の合同ワーキンググループ資料「医療・介護間における電子的な情報連携に係る議論の整理」を示しました。歯科医院にとって重要なのは、診療情報提供書や退院時サマリーなどを優先して電子的共有を進める方向が示され、あわせて「歯科医療機関や薬局が関係する文書や情報」も今後の検討対象として明記された点です。
今回の整理だけで、歯科医院に新しい届出や電子共有の義務が直ちに生じるわけではありません。ただし、訪問歯科、施設連携、居宅介護支援事業所や訪問看護との情報共有を行う医院では、紙、FAX、電話、独自様式で動いている連携文書を見直す時期に入っています。
この記事では、医療介護情報連携の資料を歯科医院向けに読み替え、今すぐ確認したい文書、同意、セキュリティ、連携先との運用を整理します。
3行要約
- 2026年7月23日付の合同WG資料で、医療・介護間の電子的情報連携は段階的に進める方向が示されました。
- 歯科医療機関が関係する文書は、優先実装文書そのものではありませんが、今後検討すべき対象として明記されています。
- 訪問歯科や施設連携を行う医院は、連携文書、同意取得、共有先、セキュリティ確認を先に棚卸ししましょう。
医療介護情報連携で今回整理されたこと
今回の合同WG資料は、全国医療情報プラットフォームを通じて、医療と介護の間でどの情報を電子的に共有していくかを整理したものです。歯科医院に直接の新ルールを示す通知ではなく、制度設計とシステム実装に向けた方向性の資料として読みます。
優先対象は診療情報提供書と訪問看護文書
資料1では、優先的に共有を開始する方向で実装を進める文書として、診療情報提供書、退院時サマリー、訪問看護指示書、訪問看護計画書、訪問看護報告書が挙げられています。
歯科医院がここで誤解しやすいのは、「歯科文書がすぐ同じ形で始まる」と読んでしまうことです。現時点で優先文書として明記されているのは主に医科・訪問看護の文書です。歯科医院は、まず自院が医科や介護側から受け取る情報、または施設へ返す情報が、どの文書に接続し得るかを確認します。
電子カルテ情報共有サービスと介護情報基盤が接続点になる
資料1では、電子カルテ情報共有サービスは令和8年度冬頃を目処に全国的な運用開始、介護情報基盤は令和8年度以降に準備が整った自治体から順次運用開始する想定とされています。
また、介護情報基盤の説明ページでは、自治体、利用者、介護事業所、医療機関等が介護情報等を電子的に閲覧できる情報基盤として整備が進められていると説明されています。訪問歯科を行う医院では、連携先の自治体や介護事業所がどの段階にあるかによって、当面の運用が変わる可能性があります。
歯科医院に関係するポイント
歯科医院にとっての読みどころは、歯科関連文書がまだ具体化していないことと、それでも今後検討対象に入ったことの両方です。決まっていない部分を断定せず、決まったときに対応しやすい院内整理を始めるのが実務的です。
歯科医療機関の文書は今後の検討対象
資料1と概要資料では、歯科医療機関や薬局が関係する文書や情報についても、現状の実態を踏まえた検討を進めるべきとされています。つまり、歯科は対象外ではありません。一方で、具体的な文書名、標準様式、開始時期、電子署名、同意取得の細部は、この記事作成時点では未確定です。
訪問歯科では、診療情報提供、口腔衛生管理、義歯、摂食嚥下、栄養、施設内ケアへの助言など、共有したい情報が複数あります。将来の電子化を待つだけでなく、現在の紙やFAXの連絡票を「誰が見ても同じ意味になる項目」に整えておくと、標準化への移行がしやすくなります。
口腔・栄養・リハの一体的連携にもつながる
議事概要では、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養について、一体的な取組が行われていることを考慮し、連携のあり方もより一体的なものとする考えが示されています。
これは歯科医院にとって重要です。施設や在宅での口腔評価は、義歯の適合、清掃状態、食形態、むせ、栄養摂取、リハ計画と切り離せません。歯科医院が施設へ返すコメントも、「診療しました」だけでなく、介護職、看護職、管理栄養士、リハ職が次の行動に使える情報へ変える必要があります。
既稿の医療DX・介護連携記事と違う点
このテーマは、医療DXや介護報酬改定と重なって見えます。ただし今回の記事の中心は、診療報酬の調査対応でも、介護施設側の加算解説でもありません。医療と介護の間で文書を電子的に共有する仕組みが、歯科連携にどう近づいているかです。
中医協の医療DX調査とは目的が違う
2026年6月の中医協資料では、医療DXの導入状況やサイバーセキュリティ対策の調査が歯科保険医療機関にも関係する論点として示されていました。今回の合同WG資料は、調査票への回答準備ではなく、情報共有の対象文書と実装の方向性を扱っています。
そのため、医院の対応も少し変わります。レセコンや電子カルテの導入状況を数えるだけでなく、どの患者情報を、どの連携先へ、どの目的で、どの記録として渡しているかを確認します。
介護報酬の口腔・栄養連携とも視点が違う
2026年7月の介護給付費分科会資料では、施設系サービスの口腔・栄養・リハ連携が論点になっていました。今回の合同WG資料では、その連携を支える電子的な情報共有の仕組みが論点です。
施設側の加算名を追うだけでは、歯科医院の準備としては不十分です。自院から施設へ返す情報が、介護記録やケアプラン、リハ計画、栄養管理の見直しに使える形になっているかを見直します。
歯科医院向けの準備チェックリスト
- 連携先ごとに、紙、FAX、電話、メール、システム入力、施設独自様式のどれで情報を共有しているか一覧化する。
- 訪問歯科の診療結果、口腔衛生管理、義歯、摂食嚥下、栄養、リハに関する共有項目を固定する。
- 患者本人または家族への説明、同意取得、共有先、共有目的をどこに記録しているか確認する。
- 介護施設、居宅介護支援事業所、訪問看護、医科、薬局との窓口担当者を更新する。
- 電子カルテ、レセコン、院内共有フォルダ、外部連携ツールのアクセス権限を点検する。
- 医療情報システム安全管理ガイドライン第7.0版とサイバーセキュリティ対策チェックリストを、歯科医院の規模に合わせて確認する。
- 将来の標準様式に移しやすいよう、自由記載だけでなく、選択式や定型文で残せる項目を増やす。
連携文書を3種類に分ける
院内で最初に行うとよいのは、文書を「受け取る文書」「渡す文書」「院内に残す文書」に分けることです。医科からの診療情報提供、退院時サマリー、施設のアセスメント、ケアプラン、訪問看護からの連絡は受け取る文書です。歯科診療結果、口腔衛生管理の助言、義歯や食形態に関するコメントは渡す文書です。カルテ、訪問記録、同意記録、送信記録は院内に残す文書です。
この3種類が混ざると、誰に何を伝えたか、患者にどこまで説明したか、後から確認しにくくなります。電子化の前に、文書の目的と保存場所をそろえることが重要です。
歯科衛生士が使う共有項目を標準化する
施設連携では、歯科衛生士の観察や助言が重要な情報になります。清掃困難部位、口腔乾燥、義歯の使用状況、食事中のむせ、食形態の注意、口腔ケア時の姿勢、次回確認点などは、施設職員が日々のケアに使いやすい項目です。
自由記載だけに頼ると、担当者によって粒度が変わります。チェック欄、短い定型文、緊急度の区分、次回確認日の欄を作ると、介護側へ渡す情報の質がそろいやすくなります。
注意点と今後確認すべき資料
今回の資料は、歯科医院の算定要件や届出義務を新たに決めたものではありません。現時点では、決定済みの方向性と未確定の実装事項を分けて読む必要があります。
新しい算定や届出が決まったわけではない
歯科医療機関が関係する文書や情報は、今後検討を進める対象として記載されています。したがって、この記事作成時点で「歯科医院はこの様式を使う」「この日から電子共有が必須になる」「新しい届出が必要になる」とは断定できません。
医院では、現行の診療報酬、介護報酬、個人情報保護、医療情報システム安全管理のルールに沿って運用します。そのうえで、将来の標準化に備えて、連携文書と記録を整理します。
セキュリティと同意取得は先に整える
資料1では、情報共有に当たって、セキュリティに配慮した運用、現場活用を支援するマニュアル、既存運用を踏まえた同意取得方法の整理が指摘されています。参考資料2でも、電子署名やセキュリティ事案時の説明に関する論点が示されています。
歯科医院では、システム導入の有無だけでなく、誰がアクセスできるか、共有先をどう確認するか、誤送信時にどう対応するか、患者へどのように説明するかを決めておく必要があります。医療情報システム安全管理ガイドライン第7.0版とチェックリストは、その確認の土台になります。
次に見るべき一次情報
次に確認したいのは、医療等情報利活用WGと介護情報利活用WGの追加資料、電子カルテ情報共有サービスの実装通知、介護情報基盤の自治体・事業所向け資料、歯科医師会や関係団体の周知です。
特に、歯科医療機関が関係する文書名、標準様式、電子署名、患者同意、診療報酬・介護報酬との関係が出た場合は、訪問歯科や施設連携の運用を具体的に見直す必要があります。
よくある質問
今回の資料で歯科医院に新しい義務はできましたか
今回確認した資料だけで、歯科医院に新しい届出や電子共有義務が直ちに生じたとは読めません。歯科医療機関が関係する文書や情報は、今後検討を進める対象として示されています。
訪問歯科をしていない医院にも関係しますか
直接の影響は訪問歯科や施設連携を行う医院の方が大きいです。ただし、電子カルテ、レセコン、診療情報提供、患者同意、医療情報セキュリティは外来中心の歯科医院にも関係します。
まず何を確認すればよいですか
最初は連携文書の棚卸しです。どの患者情報を、誰から受け取り、誰へ渡し、どこに保存し、患者へどう説明しているかを一覧にします。
電子カルテを導入していない医院は対象外ですか
対象外とは言い切れません。電子カルテ情報共有サービスの具体的な利用条件は今後の資料で確認が必要ですが、紙やFAXで連携している医院でも、同意取得、共有先、記録保存、セキュリティの確認は必要です。
出典
- 厚生労働省「健康・医療・介護情報利活用検討会 第34回医療等情報利活用WG、第11回介護情報利活用WG資料について」2026年7月23日
- 厚生労働省「医療・介護間における電子的な情報連携に係る議論の整理」2026年7月23日
- 厚生労働省「医療・介護間における電子的な情報連携に係る議論の整理(概要)」2026年7月23日
- 厚生労働省「第34回医療等情報利活用WG、第11回介護情報利活用WG 議事概要」2026年7月23日
- 厚生労働省「実装イメージの一例 医療から介護への診療情報提供書・退院時サマリーの共有の仕組み」2026年7月23日
- 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」2026年6月
- 厚生労働省「介護情報基盤について」
- e-Gov法令検索「歯科医師法」
- e-Gov法令検索「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」
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