最低賃金目安答申、歯科医院の給与表確認点
厚生労働省は2026年7月28日、「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」を公表しました。第75回中央最低賃金審議会で取りまとめられた目安は、Aランク54円、Bランク56円、Cランク56円です。目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合、全国加重平均は1,176円になる見込みと示されています。
歯科医院がまず押さえるべき点は、これは都道府県別の最終額や発効日そのものではないことです。今後、各地方最低賃金審議会で審議し、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定します。ただし、最低賃金付近の時給者、月給者の時間額換算、求人票、派遣契約、院内掲示を見直す準備は、今から進められます。
この記事では、最低賃金の目安答申を歯科医院の給与表と採用実務へ落とし込み、受付、歯科助手、滅菌・清掃担当、短時間勤務の歯科衛生士を漏らさず確認する順番を整理します。
3行要約
- 2026年7月28日、令和8年度地域別最低賃金額改定の目安として、Aランク54円、B/Cランク56円の引上げ額が示されました。
- 歯科医院では、時給者だけでなく月給者、試用期間中職員、派遣スタッフ、求人票、院内掲示が確認対象になります。
- 都道府県別の最終額と発効日は今後決まります。まず自院所在地のランクと更新担当を確認しましょう。
最低賃金の目安答申で決まったこと
今回決まったのは、中央最低賃金審議会として地方最低賃金審議会に示す引上げ額の目安です。歯科医院の給与を今日から新額に変える通知ではありませんが、正式額決定前の準備材料としては十分に具体的です。
Aランク54円、B/Cランク56円が示された
厚生労働省の報道発表では、Aランクは埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪の6都府県、Bランクは28道府県、Cランクは13県と整理されています。引上げ額の目安は、Aランクが54円、BランクとCランクが56円です。
複数医院を運営する法人では、医院所在地ごとにランクが異なる可能性があります。東京と埼玉だけでなく、県境をまたぐ分院、訪問拠点、技工部門、事務センターがある場合は、事業場単位で確認します。
都道府県別の最終額と発効日はまだ別に確認する
報道発表は、今後、各地方最低賃金審議会で調査審議の上で答申が行われ、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定すると説明しています。つまり、今回の目安答申は重要な節目ですが、都道府県別の最終額と発効日は今後の正式情報で確認します。
院内共有では、「令和8年度額が全国一律で決まった」と伝えないようにします。正確には、「ランク別の引上げ目安が出たので、自院の給与表と求人票の更新準備に入る」です。
2026年7月13日の審議中記事から変わった点
2026年7月13日時点では、令和8年度の地域別最低賃金は審議中で、金額も発効日も未確定でした。今回はランク別の引上げ目安が示されたため、単なる情報収集ではなく、院内の更新対象を具体的に洗い出す段階に進みました。
準備段階から給与表の差額確認へ進む
既稿では、時給者、月給者、派遣、求人票、周知義務を棚卸しする準備を扱いました。今回の記事では、そこから一歩進めて、自院所在地のランク、現行時給との差額見込み、月給者の時間額換算、求人媒体の更新担当を確認します。
例えば、受付や歯科助手の時給が現行最低賃金に近い医院では、目安額を仮置きして、どの職員が発効日までに調整候補になるかを先に把握できます。ただし、最終額が出るまでは給与改定額を断定せず、候補者リストとして管理します。
全国加重平均1,176円は自院所在地の金額ではない
報道発表では、目安どおりに引上げが行われた場合の全国加重平均が1,176円になると示されています。この数字は全国の平均的な見込みであり、個別の都道府県で適用される最低賃金額ではありません。
歯科医院では、全国加重平均ではなく、自院所在地の令和7年度額、該当ランクの目安、今後の都道府県別答申、発効日を順に確認します。求人票に「全国平均」を基準として書くのではなく、事業場所在地の地域別最低賃金を基準にします。
歯科医院で対象になる職員と賃金
最低賃金は、雇用形態に関係なくすべての労働者に適用されます。歯科医院では、正社員だけでなく、短時間、試用期間中、派遣、月給制の職員まで確認します。
受付・歯科助手・滅菌担当を先に見る
地域別最低賃金付近になりやすいのは、受付、歯科助手、滅菌・清掃担当、夕方だけの短時間スタッフ、学生アルバイトです。資格職である歯科衛生士でも、短時間勤務や試用期間中の条件がある場合は確認対象から外しません。
「常勤だから大丈夫」「有資格者だから大丈夫」という見方ではなく、対象賃金を時間額に換算して、適用される地域別最低賃金額と比較します。
残業代・賞与・通勤手当で下限割れを埋めない
厚生労働省の最低賃金制度ページでは、対象となる賃金は毎月支払われる基本的な賃金で、残業代やボーナスなどは対象外と説明されています。最低賃金法でも、算入しない賃金が定められています。
歯科医院では、総支給額ではなく、比較対象にできる基本給や毎月固定の手当を分けて見ます。賞与、時間外手当、休日手当、通勤手当、臨時手当を含めて「結果的に超えている」と判断しないようにします。
派遣スタッフは派遣先の最低賃金を見る
最低賃金制度ページと最低賃金法では、派遣労働者には派遣先の地域別最低賃金が適用されることが確認できます。受付、事務、滅菌補助などを派遣で受け入れている歯科医院では、派遣会社任せにせず、自院所在地の改定額と発効日を共有します。
特に、契約単価の改定時期、請求単価への反映、発効日前後の勤務分の扱いは、派遣契約の担当者が早めに確認しておくと混乱を避けやすくなります。
歯科医院向けの最低賃金チェックリスト
- 自院所在地の都道府県がA/B/Cのどのランクか確認する。
- 令和7年度の地域別最低賃金額と発効日を確認し、現在の時給表と並べる。
- 受付、歯科助手、滅菌・清掃担当、短時間勤務の歯科衛生士、試用期間中職員を一覧化する。
- 月給者は、最低賃金比較に使える対象賃金を所定労働時間で時間額換算する。
- 残業代、賞与、通勤手当、臨時手当など、比較対象に含めない賃金を分ける。
- 求人票、採用ページ、労働条件通知書、雇用契約書、給与計算ソフト、院内掲示の更新担当を決める。
- 派遣スタッフがいる場合は、派遣先所在地の最低賃金と契約単価の改定時期を派遣会社に確認する。
職種別の確認表
区分 | 先に見る項目 | 注意点 |
|---|---|---|
受付・歯科助手 | 時給、月給の時間額換算、試用期間中条件 | 求人票の下限額と実際の雇用契約をそろえる |
滅菌・清掃担当 | 短時間勤務の時給、シフト時間、対象賃金 | 勤務時間が短くても最低賃金の対象になる |
歯科衛生士 | 非常勤時給、固定手当、研修期間中条件 | 資格職の相場確認と最低賃金確認は別に行う |
月給制職員 | 基本給、毎月固定手当、所定労働時間 | 月給総額だけで判断せず時間額に換算する |
派遣スタッフ | 派遣先所在地、契約単価、改定反映日 | 派遣元所在地ではなく派遣先地域を見る |
求人票と院内周知の更新を遅らせない
最低賃金対応で見落としやすいのは、給与表だけ直して求人票や院内掲示が古いまま残ることです。採用ページ、求人媒体、紹介会社向け資料、労働条件通知書、雇用契約書、給与計算ソフト、院内掲示を同じ一覧で管理します。
求人票は発効日前に更新準備をする
都道府県別の最終額と発効日が出た後は、発効日までに求人票を更新する必要があります。受付や歯科助手の求人を複数媒体に出している医院では、媒体ごとの管理画面、紹介会社、院内掲示、医院サイトの採用ページを洗い出します。
求人票の下限額が古いと、応募者への説明、雇用契約、採用後の給与計算にずれが出ます。最低賃金の正式額が出る前に、どの求人媒体を誰が更新するかだけでも決めておくと対応が速くなります。
周知義務は掲示だけに限らない
最低賃金法は、使用者に対して最低賃金の概要を常時作業場の見やすい場所に掲示するなど、労働者に周知させる措置を求めています。歯科医院では、スタッフルーム掲示、院内共有フォルダ、給与明細同封、チャットでの共有など、医院規模に合う方法を決めます。
ただし、周知しただけで賃金確認が終わるわけではありません。周知、給与表、雇用契約、求人票、派遣契約が同じ発効日で更新されているかを確認します。
注意点と次に見る資料
今回の目安答申は、歯科医院に直接の診療報酬改定や施設基準届出を求めるものではありません。一方で、すべての使用者に関係する労務上の下限ルールなので、歯科医院でも実務影響はあります。
正式額と発効日は地方の情報で確認する
次に確認すべき一次情報は、都道府県ごとの地方最低賃金審議会の答申、都道府県労働局の公示、令和8年度地域別最低賃金全国一覧です。中央の目安だけで最終判断せず、自院所在地の正式額と発効日で給与表を確定します。
助成金は利用可否を断定しない
厚生労働省の最低賃金制度ページでは、業務改善助成金や働き方改革推進支援センターも案内されています。歯科医院が使えるかどうかは、事業場内最低賃金、賃金引上げ計画、設備投資、申請時期などの個別条件で変わります。記事だけで利用可否を決めず、最新の募集要領や相談窓口で確認してください。
FAQ
令和8年度の最低賃金額はもう確定しましたか
都道府県別の最終額と発効日は、この記事作成時点ではまだ今後確認が必要です。2026年7月28日に公表されたのは、中央最低賃金審議会が地方審議に示すランク別の引上げ額の目安です。
歯科医院では誰から確認すべきですか
まず、受付、歯科助手、滅菌・清掃担当、短時間勤務職員、試用期間中職員を確認します。次に月給者を時間額換算し、派遣スタッフの契約単価と改定反映日を確認します。
月給制なら最低賃金の確認は不要ですか
不要ではありません。月給制でも、最低賃金比較に使える対象賃金を時間額に換算し、適用される地域別最低賃金額と比較します。
全国加重平均1,176円を求人票に使えばよいですか
使いません。全国加重平均は全国の平均的な見込みであり、自院に適用される最低賃金額ではありません。求人票は、事業場所在地の地域別最低賃金額と発効日に合わせて更新します。
出典
- 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」2026年7月28日
- 厚生労働省「第75回中央最低賃金審議会 資料」2026年7月28日
- 厚生労働省「最低賃金制度」
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
- e-Gov法令検索「最低賃金法」
Selectdays カスタマーサクセス担当
Selectdaysの実運用のサポートを担当しています。店舗のDX化に関するお悩み解決のノウハウを発信します。
