歯科衛生士の特定行為はどう変わる?2026年3月検討会の要点
業界情報

歯科衛生士の特定行為はどう変わる?2026年3月検討会の要点

Selectdays CS担当者

2026年3月9日に開かれた厚生労働省の第5回「歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会」では、歯科衛生士の歯科診療補助行為に「特定行為」を位置づけた場合のイメージが示されました。重要なのは、これが「もう制度化された」という意味ではなく、手順書と研修を前提に、どこまで包括的な指示を認めるかを検討している段階だという点です。

歯科医院として今見るべきなのは、賛成か反対かだけではありません。どの行為を、どの病状範囲で、誰の指示の下で行い、どこまで記録と説明をそろえる必要があるのかを、現行ルールの範囲で整理しておくことです。この記事では、2026年3月9日の検討会資料と、2025年6月20日の浸潤麻酔研修プログラム通知を基に、現時点で分かっていることをわかりやすく整理します。

2026年3月9日の検討会で何が示されたか

今回の検討会資料でまず押さえたいのは、歯科衛生士の業務範囲が一気に拡大したわけではないという点です。資料2では、看護師の特定行為研修制度を参考に、歯科衛生士の歯科診療補助行為に特定行為を位置づけた場合のイメージが示されました。

手順書による包括的指示のイメージ

資料2では、特定行為研修を受けた歯科衛生士が、手順書であらかじめ指示された内容については、都度歯科医師の確認や指示がなくても補助を行えるイメージが示されています。通常の歯科診療補助では、患者ごとに歯科医師が診察し、その都度処置を指示する流れが基本です。これに対し、特定行為のイメージでは、歯科医師が事前に患者の病状範囲や行為内容を手順書に定め、その範囲内で歯科衛生士が補助を行う構図になっています。

ここでいう「手順書」は、単なる院内メモではありません。看護師の特定行為制度を参照した説明では、患者の病状の範囲、実施する補助行為の内容、医師または歯科医師との連絡体制、報告方法などを含む文書を指します。つまり、制度が具体化するなら、現場で求められるのは人の善意や経験則ではなく、標準化された指示と記録です。

制度化が決まったわけではない点

一方で、2026年3月30日時点の公開資料から言えるのは、あくまで「位置づける場合のイメージ」が示されたということまでです。制度化の有無、対象行為の確定、研修時間、指定研修機関、責任分担の法的整理は、まだ公開資料だけでは確定していません。

検討会の主な意見でも、まずは在宅療養や口腔ケア・管理から検討すべきではないか、広い範囲を一度に設定すると現場の混乱を招くのではないか、責任の所在を整理すべきだ、といった慎重論が並んでいます。したがって、現時点で「歯科衛生士がもう歯科医師確認なしで新しい処置を行えるようになった」と理解するのは正確ではありません。

なぜ今この議論が進んでいるのか

この議論の背景には、単なる業務効率化ではなく、歯科医療提供体制そのものへの懸念があります。資料2では、少子高齢化が進む中で、医療・介護の両方のニーズを持つ高齢者が増えるため、より少ない人員でも必要な歯科医療を提供する観点から検討が必要だと整理されています。

歯科衛生士の約9割は歯科診療所勤務

資料1によると、就業歯科衛生士の約9割は歯科診療所に勤務しており、その数は増加傾向です。つまり、この制度議論は病院歯科や在宅専門チームだけの話ではなく、一般の歯科診療所に直結するテーマです。

さらに、資料2では、現状で歯科衛生士が実施頻度の高い補助行為として、歯周組織検査、歯肉縁下スケーリング、ルートプレーニング、SPT・メインテナンスなどが挙げられています。外来中心の医院でも関係が深い行為が並んでいるため、制度議論が具体化した場合の影響は広いと考えられます。

2034年の供給推計と30代前半の就業低下

資料1では、2024年の就業歯科衛生士数を149,579人とした上で、2034年の供給推計を約184,000人から186,000人と試算しています。さらに、離職防止や就業率向上を織り込んだシナリオでは、約188,000人から246,000人まで広がる推計も示されています。

ただし、年齢階級別にみると30代前半で就業者数が下がる傾向が示されており、供給数の単純な増加だけで安心できる話でもありません。制度の見直し、離職防止、再就業支援、業務の標準化は、別々の話ではなく一体で見た方が実態に合っています。

浸潤麻酔の通知はどう読むべきか

歯科衛生士の特定行為の議論を読むとき、参考になるのが2025年6月20日付の「歯科衛生士による浸潤麻酔の実施に向けた研修プログラム(例)令和7年度版」通知です。この通知は制度化そのものではなく、安全性と教育の考え方を示す一次資料として重要です。

2025年6月20日通知のポイント

通知では、歯科衛生士が浸潤麻酔行為を実施する場合は、歯科医師が当該歯科衛生士に指示した上で実施される必要があり、歯科衛生士が自らの判断で実施することはできないと明記されています。また、現状の歯科衛生士養成課程では、浸潤麻酔行為を想定した教育はほとんど行われていないとも示されています。

その上で、厚生労働省は必要な知識と技術を習得するための研修内容を整理し、BLS講習、講義、実習、筆記試験を含む研修プログラム例をまとめました。対象となる浸潤麻酔行為の範囲も、現時点では歯肉縁上・歯肉縁下の歯石除去やルートプレーニング時の疼痛除去を目的としたものが望ましい、と限定的に整理されています。

研修受講と実施可否は別問題

特に重要なのは、この通知が「研修を受ければ歯科衛生士の浸潤麻酔行為を一律に推奨するものではない」と明記している点です。実施可否は、患者の状態や歯科衛生士の知識・技能を踏まえて、各歯科医師が慎重に判断すべきとされています。

この考え方は、今後の特定行為制度の議論を読む上でもそのまま参考になります。つまり、研修制度の整備と、個別症例での実施判断は別の層の話です。医院が制度だけを見て安心するのではなく、症例判断と安全管理の仕組みを持てるかが問われます。

歯科医院が今やるべき準備

制度がまだ確定していない段階でも、医院として今から着手できる準備はあります。むしろ、制度が固まってから慌てるより、現行運用を棚卸ししておく方が安全です。

指示系統と記録ルールの棚卸し

最初に確認したいのは、歯科衛生士が日常的に行っている補助行為のうち、どの行為が個別指示で行われ、どの行為が実質的に包括的な運用になっているかです。たとえば、歯周組織検査、スケーリング、ルートプレーニング、SPTなどで、院内の暗黙知に頼っていないかを見直す必要があります。

制度化の有無にかかわらず、患者の病状範囲、禁忌や中止基準、歯科医師への確認タイミング、記録様式を整理しておくことは有効です。将来の手順書議論に備えるだけでなく、現行の医療安全の質も上げやすくなります。

患者説明と責任分担の整理

検討会資料でも、患者がどう受け止めるかをあらかじめ考える必要があるという意見が示されています。院内では当たり前の役割分担でも、患者には「誰が何をしているのか」が見えにくいことがあります。

そのため、歯科衛生士がどの補助行為をどの範囲で担うのか、歯科医師がどこで診察・確認し、最終責任を持つのかを、スタッフ間だけでなく患者説明の文言としても整えておくべきです。制度論が前に進むほど、この説明責任は重くなります。

今後の見通し

2026年3月30日時点では、歯科衛生士の特定行為制度は「設計の方向性を議論している段階」です。現場として大切なのは、期待先行で運用を変えないことと、制度化された場合に何が必要になるかを冷静に見積もることです。

次に確認したい一次情報

次に追いたいのは、歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会の次回資料や取りまとめ、関連する通知や省令改正の有無です。特に確認したいのは、対象行為の範囲、研修制度の具体像、責任分担、在宅歯科と外来歯科のどこから実装を想定するのかという点です。

浸潤麻酔の研修プログラム通知に続くような追加の安全管理資料が出るかも重要です。歯科医院としては、「すぐ任せられるか」ではなく、「制度が動いたときに安全に対応できるか」という視点で一次資料を継続的に確認すると、判断を誤りにくくなります。

FAQ

歯科衛生士は、もう歯科医師の都度確認なしで麻酔できるのですか

2026年3月30日時点の公開資料からは、そのようには言えません。2025年6月20日の通知では、浸潤麻酔行為は歯科医師の指示の下で行う必要があり、歯科衛生士が自らの判断で実施することはできないと明記されています。

研修を受ければ、どの医院でも同じように任せられますか

一律には言えません。浸潤麻酔の通知でも、実施可否は患者の状態や歯科衛生士の知識・技能を踏まえて各歯科医師が慎重に判断すべきとされています。制度議論が進んでも、個別症例の判断と院内体制の整備は別途必要です。

特定行為の議論は在宅歯科だけの話ですか

在宅歯科が重要な起点として挙げられていますが、それだけではありません。資料2では、歯周治療や外来で頻度の高い補助行為も示されており、外来中心の歯科診療所でも無関係ではありません。

出典

Writer Profile

Selectdays CS担当者

Selectdaysの実運用のサポートを担当しています。店舗のDX化に関するお悩み解決のノウハウを発信します。

業界情報をあなたの医院へ

歯科経営に役立つ最新情報を最速・正確にまとめてお届けします。

あなたの医院でも、
理想の予約体験を始めませんか?

実際の管理画面デモや、他院さまでの活用事例を詳しくご紹介します。

お問い合わせ

お申し込みいただくと、歯科専門パートナーが
御院での活用方法をご案内いたします

今すぐ相談する

15分でクイックデモ

15分ですばやくデモンストレーションを行います
実際の機能や利用方法をご確認いただけます

資料請求

Selectdaysの機能や費用感について
簡潔な資料をお送りいたします

資料請求