
OTC類似薬、歯科の処方箋対応は2027年3月から
厚生労働省は2026年9月30日、OTC類似薬の一部保険外療養に関する政令・省令・告示と詳細通知を公表しました。制度は2027年3月1日に始まり、対象医薬品を処方する歯科医院では、特別の料金の対象か対象外かを処方時に判断します。
歯科で特に重要なのは、対象薬を処方するだけで一律に追加負担となるわけではない点です。抜歯など侵襲を伴う処置に伴う処方で処置後14日以内分の場合を含め、9つの対象外類型が示されています。医院は薬剤の照合だけでなく、判断根拠、処方箋、レセプト、会計を一続きで準備する必要があります。
3行要約
- OTC類似薬の一部保険外療養は2027年3月1日に施行されます。
- 対象薬は原則として特別の料金が生じますが、処置後14日以内など9つの対象外類型があります。
- 歯科医院は対象薬ごとの判定を処方箋の○・―、レセプト理由、院内処方の会計へ反映します。
OTC類似薬の歯科対応は2027年3月1日から
今回の通知で、施行日と医院の実務が確定しました。「OTC類似薬」と呼ばれますが、対象は市販薬そのものではなく、市販薬と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品です。
薬価の4分の1を特別の料金として計算
対象医薬品が一部保険外療養になる場合、特別の料金は「対象薬の薬価×4分の1×投薬全量」です。これは薬局や医院の購入額の4分の1でも、患者が支払う会計総額の4分の1でもありません。
患者は通常の保険診療の一部負担に加えて、この特別の料金を支払います。院内処方なら歯科医院、院外処方なら保険薬局が徴収します。
対象薬は厚労省リストで確認
対象可否は商品名の印象や「鎮痛薬」「口内炎薬」といった薬効だけでは判断しません。厚労省が公開した対象医薬品リスト、効能・効果または傷病名との対応関係リスト、妊婦等の対象外リストを使います。
対象医薬品リストは原則として毎年4月1日に更新され、3月頃に事前公表される予定です。2027年3月の施行前には最新版を再確認します。
歯科で重要な対象外9類型
対象薬でも、通知が定める9類型のいずれかに該当すれば、一部保険外療養の特別の料金はかかりません。歯科医院では「対象薬か」と「対象外類型か」を別々に判定するのがポイントです。
抜歯など侵襲を伴う処置後14日以内
「侵襲を伴う検査、処置または手術に伴う処方・調剤で、その検査等の後14日以内分」は対象外です。歯科では抜歯などが関係し得ますが、歯科からの処方がすべて自動的に対象外になるわけではありません。
対象薬が処置に伴うものか、処置後14日以内分かを診療記録で確認します。たとえば同じ鎮痛薬でも、処置と無関係な症状への処方はこの類型だけを理由に対象外とはできません。
年齢・がん・難病・長期使用なども対象外
対象外9類型は次のとおりです。
- 年齢:18歳に達する日以後の最初の3月31日まで
- がん:がん、またはがん治療に関連して生じた状態
- 難病等:指定難病、小児慢性特定疾病等と関連する状態
- 公費:国の公費負担医療
- 入院:入院時の処方。退院時処方を含む
- 処置等:侵襲を伴う検査・処置・手術に伴う処方で、実施後14日以内分
- 長期使用:年間を通じた症状の持続と治療継続性を確認し、長期使用が医療上必要
- 効能・効果:類似OTCの効能・効果では対応できない状態
- 妊婦等:妊婦、妊娠の可能性がある人、授乳婦が類似OTCを使用することが特に困難
対象外判定は患者属性だけでなく、薬の使用目的や処置との関係を含みます。対象外として処方する場合は、後述するレセプト理由記載まで見据えて根拠を残します。
処方箋・レセプト・会計はどう変わるか
制度対応は診察室だけで完結しません。処方時の判断が処方箋、薬局の調剤、レセプト、会計へ連鎖するため、担当者間の受け渡しを事前に確認します。
対象薬ごとに○または―を記載
2027年3月1日から処方箋に「一部保険外療養」欄が新設されます。対象薬を処方する場合、特別の料金の対象なら「○」、対象外なら「―」を医薬品ごとに記載します。空欄のまま院外処方すると、原則として薬局から疑義照会が必要になります。
旧様式の処方箋も当分の間は使用できますが、対象薬名の近くに「一部保険外療養 ○」または「一部保険外療養 ―」を手書き等で明確に記載します。2027年3月1日より前に発行した処方箋を同日以降に薬局へ提出した場合は、施行前の扱いです。
対象外ならレセプトに理由を記載
保険医療機関が対象薬を一部保険外療養の対象外として処方するときは、診療報酬明細書に理由を記載します。カルテ上の判断根拠とレセプトの理由がずれない運用が必要です。
歯科医院では、対象外類型を選んだ担当者、根拠となる年齢・処置日・病態・継続性、処方日数を確認できるようにします。具体的な入力方法はレセコンベンダーの案内も確認してください。
院内処方は歯科医院が説明・徴収
院内処方では歯科医院が特別の料金を受け取り、院外処方では保険薬局が受け取ります。院内処方を行う医院は、患者への説明、金額計算、保険負担と特別料金の区分、領収証表示まで準備が必要です。
患者説明では「市販薬を買うよう求める制度」や「薬が保険適用外になった」と単純化しないことが重要です。必要な薬剤は引き続き患者の症状や処置内容から歯科医師が判断し、対象薬に該当する場合だけ制度上の判定を行います。
歯科医院の実務対応チェックリスト
- 厚労省の対象医薬品リストと自院の採用薬・頻用薬を照合したか
- 対象外9類型を問診・カルテで確認できるようにしたか
- 抜歯等の処置日と処方日数から14日以内分を確認できるか
- 処方箋へ薬剤ごとの○・―を出力または追記できるか
- 対象外理由をレセプトへ記載する手順を決めたか
- 院内処方の特別料金を通常の一部負担と区分して計算できるか
- 領収証に保険負担と特別の料金を分けて表示できるか
- 患者からの質問に対する説明文を診療側と受付で統一したか
- 2027年3月前の対象薬リスト更新とベンダー対応を確認する担当者を決めたか
まず「対象薬確認→対象外判定→カルテ→処方箋→レセプト→会計」の順に、1つのモデル症例で通し確認します。院外処方だけの医院でも、○・―の記載と薬局からの疑義照会対応は必要です。
前回記事から確定した点と未確定事項
7月の検討段階では、歯科の処置後投薬がどう扱われるか、どの患者が対象外か、施行日や処方箋実務は未確定でした。今回の通知で医院が準備できる粒度まで具体化しています。
7月の検討段階から制度確定へ
今回確定したのは、2027年3月1日の施行、対象外9類型、処方箋の○・―、旧様式の経過措置、対象外時のレセプト理由記載、院内・院外処方ごとの徴収主体です。
一方、同じ医薬品が長期収載品にも該当する場合、一部保険外療養の対象なら長期収載品の選定療養とは重複しません。対象外の場合でも、患者希望で長期収載品を選ぶと選定療養の特別料金が生じる場合があるため、2制度を混同しないようにします。
消費税・広報資材・システム対応は続報待ち
特別の料金に対する消費税の扱いは、厚労省が2026年末を目途に示す予定です。患者向けリーフレットや医療機関向け解説資材も順次公表予定とされています。
レセコンや電子カルテの実装時期、処方箋出力、レセプトコメントの操作は製品ごとに異なり得ます。医院独自の計算や暫定コードで先行せず、厚労省の続報とベンダーの正式案内を確認します。
FAQ
歯科で処方する鎮痛薬はすべて特別の料金の対象ですか?
いいえ。まず厚労省の対象医薬品リストに含まれるかを確認し、そのうえで対象外9類型に該当するかを判断します。薬効名だけでは決められません。
抜歯後の鎮痛薬は対象外ですか?
対象薬であっても、侵襲を伴う処置に伴う処方で処置後14日以内分なら対象外類型に該当し得ます。ただし、処置との関連と日数を個別に確認し、対象外理由をレセプトへ記載する必要があります。
旧様式の処方箋は2027年3月1日から使えませんか?
旧様式も当分の間は使えます。対象薬名の近くへ「一部保険外療養 ○」または「一部保険外療養 ―」を明確に追記します。
院外処方なら歯科医院の会計対応は不要ですか?
特別の料金を徴収するのは薬局ですが、歯科医院は対象外判定と処方箋の○・―、必要な患者説明、対象外時のレセプト理由記載に対応します。
出典
- 厚生労働省「要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性が特に高い医療用医薬品の処方又は調剤に係る一部保険外療養について」(2026年9月30日、p.1-5・別紙p.6-19)
- 厚生労働省「掲示事項等・保険外併用療養費に係る留意事項通知の一部改正」(2026年9月30日、p.40-41)
- 厚生労働省「医療費の内容の分かる領収証及び個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書の交付について」(2026年9月30日、p.1-6)
- 厚生労働省「対象医薬品等について」(2026年9月30日、p.1-2)
- 厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しについて」
Selectdays カスタマーサクセス担当
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