セルフメディケーション税制、歯科で聞かれる確認点
厚生労働省は2026年6月19日、第5回セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会の資料を掲載しました。資料では、セルフメディケーション税制について、スイッチOTC医薬品の適用期限を撤廃し、それ以外の医薬品は5年延長する見直しが示されています。
歯科医院でまず押さえたいのは、今回の話題が「歯科で処方する薬の保険適用が直ちに変わる」という話ではなく、患者が市販薬を購入した場合の税制上の扱いに関する見直しだという点です。抜歯後の痛み、口腔内の炎症、口内炎、かぜ症状などをきっかけに、患者から市販薬や医療費控除について聞かれる場面では、制度の範囲を誤って説明しないことが重要です。
この記事では、厚労省資料と議事要旨を基に、歯科医院が患者説明で確認したいポイントを整理します。
セルフメディケーション税制で何が見直されるか
今回の資料で扱われているのは、セルフメディケーション税制の対象範囲と適用期限の見直しです。歯科医院では、制度の細かな税務判断を代行するのではなく、患者が確認すべき入口を案内できるようにしておくと安全です。
スイッチOTCは期限撤廃、それ以外は5年延長
厚労省資料では、スイッチOTC医薬品について適用期限を撤廃し、スイッチOTC医薬品以外の対象医薬品については5年延長するとされています。資料上、この見直しは令和9年以降の所得から適用される整理です。
患者説明では、「来年以降の購入分や申告でどう扱われるかは、対象品目やレシート表示を確認してください」と案内するのが実務的です。歯科医院側が個別商品の税制対象可否を断定する必要はありません。
追加される対象と除外される対象がある
資料では、対象となる医薬品に、消化器官用薬、生薬を有効成分として含有する鎮咳去痰薬、OTC検査薬、薬局製造販売医薬品を追加する方向が示されています。一方で、痩身又は美容を目的として使用される可能性がある医薬品は除外するとされています。
歯科医院で誤解を避けたいのは、「OTCなら広く対象になる」と説明しないことです。対象範囲は効能効果、成分、制度上の分類、表示によって変わるため、患者には購入店舗や薬剤師、厚労省等の対象品目情報で確認するよう伝えます。
歯科医院で聞かれやすい場面
セルフメディケーション税制は税制ですが、歯科医院でも質問を受ける可能性があります。とくに、処置後の痛みや口腔内症状に関連して、市販薬を買う患者では説明の入口を持っておくと混乱を減らせます。
鎮痛薬やかぜ薬について聞かれた場合
資料では、非スイッチOTC医薬品の対象範囲に解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬などが含まれる整理が示されています。ただし、個別の商品が対象かどうかは、患者が購入時に対象マークやレシート表示を確認する必要があります。
歯科医院では、「この商品は必ず控除対象です」と言い切るより、「対象商品には表示があります。購入時のレシートを保管し、必要なら薬局や税務相談窓口で確認してください」と案内する方が正確です。
歯科口腔用薬は当然対象とは言えない
厚労省資料の対象範囲欄には、強心剤、ビタミン剤、カルシウム剤、その他の歯科口腔用薬は除外と記載されています。したがって、口内炎薬や口腔用薬について患者から聞かれた場合、歯科医院が「歯科に関係する市販薬だから対象」と説明するのは避けるべきです。
実務では、患者に対して「歯科口腔用薬は資料上、除外の記載があります。対象になるか迷う場合は、商品表示、レシート、薬局で確認してください」と伝えるのが安全です。
防風通聖散・大柴胡湯の除外で確認したいこと
議事要旨では、痩身又は美容を目的として使用される可能性がある医薬品の扱いが整理されています。歯科医院で直接処方する薬ではない場合が多いものの、患者が服用中の市販薬や漢方薬を問診で申告することはあります。
除外対象と経過措置期間
議事要旨では、税制の対象から除外する非スイッチOTC医薬品として、防風通聖散及び大柴胡湯が示されています。また、除外する医薬品の経過措置期間は、2027年1月1日から2030年12月31日までの4年間とされています。
ここで重要なのは、これはセルフメディケーション税制の対象可否に関する整理であり、歯科診療での服薬管理や医科処方の適否を判断する資料ではないという点です。
問診では服用状況を通常どおり確認する
防風通聖散や大柴胡湯を含め、患者が市販薬や漢方薬を服用している場合、歯科医院では通常どおり服薬状況を確認します。抜歯や外科処置、抗菌薬・鎮痛薬の処方を行う場合は、税制対象かどうかよりも、併用薬、既往歴、副作用歴、医科受診状況の確認が優先です。
税制の質問を受けた場合も、医療上の助言と税制上の確認を分けて説明します。「服用の安全性は診療上確認します。控除対象かどうかは購入時の表示や薬局で確認してください」と切り分けると分かりやすくなります。
保険給付見直しと混同しない
2026年6月25日には、別に「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」の第1回開催が予定されています。名称が似ているため、セルフメディケーション税制の話と混同しないことが大切です。
今回の記事の主題は税制
2026年6月19日の資料は、セルフメディケーション税制の対象範囲を扱うものです。歯科で処方する医療用医薬品の保険給付、患者負担、診療報酬上の扱いが、この資料だけで変わったとは読めません。
一方、OTC類似薬の保険給付見直しは別の検討会で議論されるテーマです。歯科医院としては、今後の資料で歯科診療に関係する鎮痛薬、外用薬、含嗽剤などが具体的に議論されるかを確認する段階です。
患者への説明は分けて行う
患者から「市販薬が保険から外れるのですか」と聞かれた場合、現時点では「今回確認されている資料は税制の対象範囲の話です。保険給付の見直しは別の検討会で議論されます」と分けて説明します。
制度変更の途中段階では、未決定の内容を先取りして説明すると不安や誤解につながります。医院内でも、受付、歯科衛生士、歯科医師で同じ説明にそろえておくと対応が安定します。
医院で準備したい説明ルール
歯科医院が行うべきことは、税務判断を肩代わりすることではありません。患者が迷ったときに、どこを確認すればよいかを短く案内できる状態にしておくことです。
対象可否は表示と公式情報で確認してもらう
患者説明では、次のようなルールにしておくと実務で使いやすくなります。
- 個別商品の控除対象可否は歯科医院で断定しない
- 購入時の対象マーク、レシート表示、薬局で確認してもらう
- 歯科口腔用薬は資料上除外記載があるため、対象と決めつけない
- 処方薬の保険給付見直しとは別テーマとして説明する
- 税務上の最終判断は税務署や税理士など適切な相談先へつなぐ
この程度の説明を院内で共有しておけば、受付での問い合わせにも対応しやすくなります。
医療上の助言と税制案内を切り分ける
歯科医院が責任を持って確認すべきなのは、患者の症状、服薬、既往歴、処置後の注意点です。税制対象かどうかは患者の購入商品や申告状況に左右されるため、医療上の説明とは切り分けます。
たとえば抜歯後に市販の鎮痛薬を追加で使いたい患者には、まず歯科医師の指示に沿って服用可否や用量を確認するよう伝えます。そのうえで、医療費控除やセルフメディケーション税制については、購入時の表示とレシートを確認してもらう流れにします。
FAQ
歯科で処方される薬の保険適用が変わったのですか。
今回確認した2026年6月19日の資料は、セルフメディケーション税制の対象範囲に関する資料です。歯科で処方する医療用医薬品の保険給付が直ちに変わったと読む資料ではありません。
口内炎薬や歯科口腔用薬は税制対象ですか。
厚労省資料には、その他の歯科口腔用薬は除外と記載されています。個別商品の扱いは、購入時の対象マーク、レシート表示、薬局、公式の対象品目情報で確認する必要があります。
患者に何と説明すればよいですか。
「対象商品かどうかは購入時の表示とレシートで確認してください。歯科医院では服用の安全性や症状への対応を確認しますが、税制対象かどうかの最終判断は薬局や税務相談先で確認してください」と説明すると安全です。
OTC類似薬の保険給付見直しとは同じ話ですか。
別の話です。セルフメディケーション税制は市販薬購入に関する税制の話で、OTC類似薬の保険給付見直しは別検討会で議論されるテーマです。今後の資料を分けて確認する必要があります。
出典
- 厚生労働省「第5回セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会 資料」
- 厚生労働省「セルフメディケーション税制について」
- 厚生労働省「第5回セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会 議事要旨」
- 厚生労働省「議事要旨(PDF)」
- 厚生労働省「第1回OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会の開催について」
Selectdays カスタマーサクセス担当
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