THP報告書、職域歯科の確認ポイント
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THP報告書、職域歯科の確認ポイント

Selectdays CS担当者

厚生労働省は2026年8月21日、「事業場における労働者の健康保持増進の在り方に関する検討会」の報告書を公表しました。報告書では、職場の健康保持増進を一次予防だけでなく二次予防まで広げ、対象となる健康課題に歯科疾患を含める方向が取りまとめられています。

このテーマは2026年8月4日の報告書案でも示されていましたが、今回のポイントは「案」から「報告書」として公表されたことです。ただし、一般企業の歯科健診が一律に義務化された、歯科医院の診療報酬や施設基準が変わった、という意味ではありません。

この記事では、THP報告書で歯科医院が見るべき差分、職域歯科保健に関わる場合の説明更新、自院スタッフの受診勧奨や健康情報管理の確認順を整理します。

3行要約

  • 厚生労働省は2026年8月21日、THP指針見直しにつながる健康保持増進の報告書を公表しました。
  • 報告書では、二次予防の対象となる健康課題に歯科疾患が含まれ、地域の歯科医師会など事業場外資源の活用も示されています。
  • 歯科医院は、企業向け説明を最終報告ベースへ更新しつつ、義務化や診療報酬変更と誤解されない表現で整理します。

THP報告書で職域歯科がどう位置づけられたか

THP報告書の要点は、職場の健康保持増進を生活習慣改善などの一次予防だけでなく、疾病の早期発見・早期治療にあたる二次予防まで広げて整理したことです。歯科疾患は、この二次予防の対象となる健康課題の一つとして明記されています。

報告書案から最終報告へ進んだ点

2026年8月4日に掲載された第4回検討会資料では、報告書案として歯科疾患を含む二次予防が示されていました。2026年8月21日の公表では、検討会の報告書として取りまとめられたため、歯科医院が企業向け資料や院内共有で使う説明は「案で示された」から「報告書で取りまとめられた」へ更新できます。

一方で、報告書内のTHP指針新旧表は改正案の位置づけであり、正式な公示日や公示番号は今後の確認事項です。記事や院内資料では、報告書の取りまとめと指針改正の施行を混同しないことが重要です。

歯科疾患は二次予防の健康課題に含まれる

報告書は、二次予防の対象となる疾病に、がん、女性特有の健康課題、歯科疾患、骨粗しょう症、眼科疾患を含むものとすべきと整理しています。歯科医院の実務に引き寄せると、職場での歯科保健は啓発や歯みがき指導だけでなく、歯科疾患の早期発見、早期受診、必要な精密確認につなげる導線づくりとして説明できます。

ただし、報告書は歯科検査の項目、頻度、対象年齢、費用負担、実施者を細かく定めていません。職域歯科を提案する場合も、制度上の義務ではなく、健康保持増進の取組として整理する必要があります。

歯科医院に関係するケース

今回のTHP報告書は、歯科医院を二つの立場から関係させます。一つはスタッフを雇用する事業場としての立場、もう一つは企業や地域に歯科口腔保健を提供する事業場外資源としての立場です。

自院スタッフを雇用する事業場として確認する

歯科医院もスタッフを雇用する事業場です。常勤だけでなく、非常勤、短時間勤務、育児や介護と両立するスタッフも含め、口腔の不調を相談しやすいか、必要な歯科受診につながるかを確認する余地があります。

実務では、勤務時間中の受診配慮、定期受診の案内、口腔不調の相談窓口、健康情報の共有範囲を決めます。自院で診る場合と他院受診を促す場合では、プライバシーや利害関係の見え方が変わるため、本人の希望を尊重する設計が必要です。

企業向けの事業場外資源として確認する

報告書のTHP指針新旧表案では、事業場外資源として、労働衛生機関、医療保険者、地域の医師会や歯科医師会、地方公共団体、産業保健総合支援センターなどが示されています。地域で企業向け歯科保健に関わる歯科医院は、この位置づけを背景資料として使えます。

日本歯科医師会の産業保健ページには、歯科早期受診勧奨リーフレット、健口チェック、企業向けの産業歯科保健資料、産業歯科保健超入門編が整理されています。企業向け提案を作る場合は、これらの公式資料をもとに、健康教育、簡易チェック、受診勧奨、歯科特殊健康診断を分けて説明するのが現実的です。

義務化や診療報酬変更と混同しない

THP報告書は、職場の健康保持増進の方向性を示す資料です。歯科医院の届出、診療報酬、保険請求、歯科特殊健康診断の報告様式を直接変更する資料ではありません。

歯科特殊健康診断とは別に読む

有害業務に係る歯科特殊健康診断は、労働安全衛生法令に基づく別の実務です。今回の報告書で扱う職域歯科の二次予防は、歯科特殊健康診断を置き換えるものでも、すべての企業に同じ歯科健診を義務づけるものでもありません。

企業から相談を受けた場合は、まず目的を分けます。口腔の健康教育なのか、任意の歯科受診勧奨なのか、有害業務に関する歯科特殊健康診断なのか、健康経営の一環なのかで、必要な資料、記録、説明責任が変わります。

保険診療の患者説明は直ちに変えない

通常の歯科診療を受ける患者に対して、今回の報告書だけを根拠に負担や算定方法が変わると説明する必要はありません。診療報酬上の扱いは、診療報酬改定通知、留意事項通知、疑義解釈、地方厚生局の案内で確認します。

企業向け資料でも、「職場で歯科疾患の二次予防を扱う方向が報告書で示された」と表現するにとどめ、「企業は必ず歯科健診を導入しなければならない」「導入すれば生産性が確実に上がる」といった断定は避けます。

職域歯科の実務チェックリスト

  • 既存の企業向け説明資料を、2026年8月21日の最終報告書ベースに更新する。
  • 健康教育、簡易チェック、受診勧奨、歯科特殊健康診断、治療と就業の両立支援を別項目として整理する。
  • 自院スタッフ向けに、口腔不調の相談先、受診配慮、他院受診の選択肢、健康情報の扱いを確認する。
  • 企業へ共有する情報を、実施人数や受診勧奨件数などの集計情報と、個人の診断名・治療内容に分ける。
  • 地域歯科医師会、産業保健総合支援センター、自治体、医療保険者の相談導線を一覧化する。
  • PHRやアプリを使う場合は、利用目的、本人同意、閲覧権限、保存期間、削除手続きを確認する。

個人の健康情報は最小限で扱う

職場の歯科相談では、企業側が知りたい実施結果と、本人の健康情報として守るべき情報を分けます。企業に共有するのは、健康教育の実施内容、参加人数、受診勧奨の件数などにとどめ、個人の診断名、治療内容、口腔写真、服薬情報は本人同意なしに共有しない設計が基本です。

報告書はPHRの活用にも触れています。歯科医院が健口チェックやPHR、アプリを企業に紹介する場合は、便利さだけでなく、同意取得、データ管理、企業への共有範囲を確認してから案内します。

報告書前後のBefore / After

今回の差分は、歯科医院に新しい届出が増えたことではなく、職域歯科保健を説明する根拠資料が報告書としてまとまったことです。

企業向け説明を更新する観点

項目

2026年8月4日の報告書案段階

2026年8月21日の報告書公表後

根拠資料

検討会資料の報告書案として説明

検討会の報告書として説明できる

歯科疾患の位置づけ

二次予防対象に含める案

二次予防対象に含める方向が報告書で取りまとめられた

医院対応

制度化を待ちながら資料を棚卸し

企業向け説明、受診勧奨、情報管理を更新

注意点

案なので決定事項と書かない

報告書公表済み。ただし指針改正の公示や義務化とは分ける

歯科医院にとっての実務価値は、公式資料をそのまま紹介することではなく、企業が迷いやすい「何を頼めるのか」「誰に相談するのか」「個人情報をどこまで扱うのか」を整理して返すことです。

今後確認すべき資料

次に確認すべきなのは、改正THP指針の正式公示、職場における心とからだの健康づくりのための手引きの改定、健康教育教材の更新です。歯科医院は、今回の報告書だけで企業向けメニューを固定せず、公式資料の更新に合わせて説明を見直します。

改正THP指針と手引きの更新を追う

厚生労働省の健康保持増進施策ページでは、THP指針、手引き、取組事例が掲載されています。既存の取組事例には定期的な歯科健診を通じた歯と口の健康づくりも含まれているため、今後の改定で歯科疾患二次予防の説明がどう具体化されるかを確認します。

地域連携先を先に整理しておく

企業から相談が来てから連携先を探すと、健康教育、健診、受診勧奨、治療導線が混ざりやすくなります。地域歯科医師会、産業保健総合支援センター、自治体、医療保険者、必要に応じて産業歯科医研修会の情報を、院内で先に一覧化しておくと対応が安定します。

FAQ

今回のTHP報告書で企業の歯科健診は義務化されましたか

いいえ。報告書は歯科疾患を含む二次予防を職場の健康保持増進に位置づける方向を取りまとめたものです。企業の一般的な歯科健診を一律に義務化した資料ではありません。

2026年8月4日の既存記事とは何が違いますか

2026年8月4日の資料は報告書案でした。2026年8月21日に報告書として公表されたため、本記事では案段階から最終報告への更新、企業向け説明の修正、今後確認すべき改正指針・手引きに焦点を移しています。

歯科医院は企業向けサービスをすぐ始めるべきですか

まずはサービス名よりも中身の切り分けが先です。健康教育、簡易チェック、受診勧奨、歯科特殊健康診断、治療と就業の両立支援を分け、自院で担える範囲と地域連携が必要な範囲を整理してください。

PHRやアプリを使った健口チェックは導入できますか

導入自体を否定するものではありませんが、利用目的、本人同意、企業への共有範囲、保存期間、削除方法を確認する必要があります。個人の口腔状態や治療内容を企業へそのまま共有しない設計が重要です。

出典

  1. 事業場における労働者の健康保持増進の在り方に関する検討会」の報告書について|厚生労働省|2026年8月21日
    該当箇所: 報道発表本文、別添報告書
  2. 事業場における労働者の健康保持増進の在り方に関する検討会 報告書|厚生労働省|2026年8月21日
    該当箇所: p.1-3 二次予防、p.5-15 THP指針新旧表案、p.23 用語
  3. 事業場における労働者の健康保持増進施策|厚生労働省
    該当箇所: THP指針の説明、手引き、定期的な歯科健診の取組事例
  4. 労働安全衛生法|e-Gov法令検索
    該当箇所: 第69条、第70条の2
  5. 労働安全衛生規則|e-Gov法令検索
    該当箇所: 第14条 産業医及び産業歯科医の職務等
  6. 産業保健|日本歯科医師会
    該当箇所: 歯科早期受診勧奨リーフレット、健口チェック、産業保健資料
  7. 産業歯科保健超入門編|日本歯科医師会
    該当箇所: THP指針、企業における歯科保健活動、健康経営
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