
職場の健康診断月間、歯科医院の確認点
厚生労働省は2026年8月21日、9月の「職場の健康診断実施強化月間」について公表しました。月間の重点事項には、一般健康診断の実施、医師からの意見聴取、事後措置、記録保存、労働基準監督署への報告に加え、健康保持増進措置の一つとして「口腔の健康の保持増進」も含まれています。
歯科医院にとっては、二つの意味があります。第一に、自院スタッフを雇用する事業者として、定期健康診断と事後措置の運用を9月に点検すること。第二に、企業や事業所から職場の口腔保健について相談されたとき、一般健康診断、任意の歯科保健活動、有害業務に係る歯科特殊健康診断を混同せず説明することです。
この記事では、職場の健康診断実施強化月間を歯科医院向けに読み替え、9月に確認したい院内実務、企業向け説明、個人情報の扱い、歯科口腔保健につなげる確認順を整理します。
3行要約
- 2026年8月21日、厚生労働省は9月の「職場の健康診断実施強化月間」を公表しました。
- 重点事項には、一般健康診断の事後措置や記録保存に加え、健康保持増進措置として口腔の健康の保持増進が含まれています。
- 歯科医院は、自院スタッフの健診運用と、企業向けの歯科保健説明を分けて9月中に点検します。
職場の健康診断実施強化月間で何を確認するか
今回の月間は、事業者に対して一般健康診断の実施だけでなく、結果を受けた医師意見、事後措置、記録、保険者との連携まで確認を促すものです。歯科医院もスタッフを雇用している以上、医療機関であっても「事業者」としての健康診断実務を持ちます。
一般健康診断は実施後の対応まで見る
リーフレットは、健康診断の実施、有所見者に対する医師からの意見聴取、医師の意見を勘案した必要な事後措置が労働安全衛生法に基づく事業者の義務であると説明しています。歯科医院では「年1回受けたか」だけで終わらせず、結果通知、個人票の保存、医師意見の取得、勤務上の配慮の記録までを確認します。
とくに小規模歯科医院では、院長や事務長が労務、勤怠、健康情報管理を兼務しがちです。健診結果を受け取る担当者、閲覧できる範囲、保管場所、事後措置の判断経路を先に決めておくと、個人情報の扱いと労務対応が混ざりにくくなります。
9月の重点事項に口腔の健康も含まれる
2026年度のリーフレットは、健康保持増進措置等の適切な実施の項目に「口腔の健康の保持増進」を挙げています。これは、歯科医院が企業向けに職場の口腔保健を説明するときの入口になります。
ただし、ここでいう口腔の健康の保持増進は、企業に一律の歯科健診義務が新設されたという意味ではありません。健康教育、歯科受診勧奨、健口チェック、任意の歯科健診、有害業務に係る歯科特殊健康診断は、目的と根拠が異なります。
歯科医院が事業者として確認すること
まず優先すべきは、自院のスタッフ管理です。歯科医院が患者に予防や定期受診を説明していても、スタッフの一般健康診断や事後措置が曖昧だと、事業者としての対応に漏れが出ます。
健診結果の保存と報告を分けて管理する
労働安全衛生規則では、定期健康診断の項目や、健康診断個人票の保存が定められています。50人以上の事業場では報告義務が問題になりますが、50人未満でも健診実施、結果通知、記録保存、医師意見、必要な事後措置は軽く扱えません。
歯科医院では、健診機関からの結果、本人への通知、院内保管用の個人票、医師意見、勤務上の配慮メモを分けます。カルテや患者情報とは別管理にし、診療スタッフだからといって院内で広く共有しないことが重要です。
女性の健康課題の問診は義務化と混同しない
リーフレットは、一般健康診断の問診票に女性特有の健康課題に関する質問が追加されたことにも触れています。一方で、同リーフレットは、この問診の目的が本人の気づきや医療機関へのアクセス支援にあり、事業者への義務付けではなく、回答が健診機関から事業者に直接提供されないことも説明しています。
歯科医院では、妊娠、月経、更年期、不妊治療などの相談を受ける場合があります。健診問診の回答を職場が把握する前提で運用せず、本人から相談があったときの勤務調整、休暇、受診配慮の窓口を整える形にとどめます。
企業向け歯科保健では何を説明するか
企業から「職場の健康診断月間に合わせて歯科の取組をしたい」と相談された場合、歯科医院は制度説明とサービス提案を切り分けます。最初に、法定健診、任意の口腔保健活動、歯科特殊健康診断のどれを求めているのかを確認します。
一般健康診断と歯科特殊健康診断は別物
一般健康診断は、労働安全衛生規則で定められた定期健康診断です。一方、歯科医師による健康診断は、歯またはその支持組織に有害な一定業務に関係する別の制度として扱われます。企業向け資料では、この二つを同じ「歯科健診」としてまとめないことが重要です。
企業の多くが求めるのは、法定義務の処理ではなく、健康教育、口腔セルフチェック、受診勧奨、健康経営の資料化です。歯科医院は、法定対応の可否を断定する前に、対象業務、従業員数、実施目的、記録の扱いを聞き取ります。
日本歯科医師会の産業保健資料を使う
日本歯科医師会の産業保健ページには、健口チェック、歯科早期受診勧奨リーフレット、企業向けの産業歯科保健資料、産業歯科保健超入門編などが整理されています。企業向けに説明する際は、独自資料だけでなく、こうした公式資料を基礎にすると説明の正確性が上がります。
特に9月の月間では、一般健康診断の結果に基づく健康管理と、歯科口腔保健の啓発を並べて提案しやすくなります。ただし、歯科医院側が企業に個人の診断名や治療内容を報告する設計は避け、集計情報や実施報告の範囲にとどめます。
9月に使う院内チェックリスト
- スタッフ全員の定期健康診断の実施状況を確認する。
- 健診結果の本人通知、健康診断個人票の保存、保管場所、閲覧権限を確認する。
- 有所見者について、医師からの意見聴取と事後措置の記録が残っているか確認する。
- 50人以上の事業場に該当する場合は、労働基準監督署への報告状況を確認する。
- 50人未満の小規模医院では、地域産業保健センターなど外部支援の相談先を確認する。
- 女性の健康課題に関する問診や相談を、本人同意なしに職場共有しない運用にする。
- 企業向け歯科保健の資料では、一般健康診断、任意の歯科保健活動、歯科特殊健康診断を分けて説明する。
院内担当を一枚で決めておく
チェックリストは、院長、事務長、労務担当、スタッフリーダーで役割を分けると動かしやすくなります。院長は事後措置の最終判断、事務長は書類と保存、スタッフリーダーは受診日程調整、外部相談は地域産業保健センターや健診機関というように、担当と資料をセットで置きます。
健康情報は、診療上の患者情報とは別の労務情報です。歯科医院内で扱う情報の種類が多いほど、閲覧権限と保存先を分ける必要があります。
前回テーマとの違い
直近では、THP報告書や職域歯科の二次予防を扱いました。今回の記事は、THPの制度論ではなく、毎年9月の「職場の健康診断実施強化月間」に合わせた院内点検と、企業向け説明の実務に限定します。
今回の焦点は法定健診後の事後措置
項目 | THP報告書の記事 | 今回の記事 |
|---|---|---|
主な根拠 | 事業場の健康保持増進に関する報告書 | 職場の健康診断実施強化月間の報道発表とリーフレット |
歯科医院の立場 | 職域歯科保健を担う外部資源 | スタッフを雇用する事業者、企業相談を受ける歯科医院 |
実務の中心 | 二次予防、受診勧奨、企業向け説明 | 一般健康診断、医師意見、事後措置、記録保存 |
注意点 | 歯科健診義務化と誤解しない | 法定健診と任意の口腔保健活動を混同しない |
同じ職場の健康管理でも、記事の使い道は異なります。企業向け提案資料にはTHP報告書の整理を、院内の労務チェックには今回の月間チェックリストを使うと整理しやすくなります。
FAQ
9月に歯科医院も必ず何か提出する必要がありますか
提出が必要かどうかは、事業場規模や実施状況によります。50人以上の事業場では定期健康診断結果報告書の提出が問題になりますが、50人未満でも健診実施、記録保存、医師意見、事後措置は確認が必要です。
口腔の健康の保持増進は歯科健診義務化を意味しますか
いいえ。今回のリーフレットは健康保持増進措置の重点事項として口腔の健康を挙げていますが、一般企業に一律の歯科健診義務を新設したものではありません。任意の歯科保健活動と、法令に基づく歯科特殊健康診断は分けて説明します。
小規模歯科医院は産業医がいなくても対応できますか
小規模事業場でも、健診結果に基づく医師意見や事後措置の確認は必要です。産業医選任義務の有無だけで判断せず、地域産業保健センター、健診機関、顧問社労士など、外部支援先を確認しておくと対応しやすくなります。
スタッフの健康診断結果を院内で共有してよいですか
共有は必要最小限にします。勤務上の配慮に必要な情報と、本人の病名、検査値、治療内容は分け、閲覧できる担当者を限定します。本人同意なく院内全体へ共有する運用は避けてください。
出典
- 「職場の健康診断実施強化月間」(9月)について|厚生労働省|2026年8月21日
該当箇所: 報道発表本文、重点事項、別添リーフレット - 9月は「職場の健康診断実施強化月間」です リーフレット|厚生労働省|2026年8月21日
該当箇所: p.1 健康診断及び事後措置、p.2 重点事項、口腔の健康の保持増進、女性の健康課題 - 労働安全衛生法|e-Gov法令検索
該当箇所: 第66条、健康診断結果の通知、保健指導等 - 労働安全衛生規則|e-Gov法令検索
該当箇所: 第44条、健康診断個人票の保存、歯科医師による健康診断 - 健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針の一部を改正する指針等について|厚生労働省
該当箇所: 医師意見、就業上の措置、不利益取扱い防止 - 産業保健|日本歯科医師会
該当箇所: 健口チェック、歯科早期受診勧奨リーフレット、産業保健各種資料 - 産業歯科保健超入門編|日本歯科医師会
該当箇所: 労働安全衛生法、歯科特殊健康診断、企業における歯科保健活動
Selectdays カスタマーサクセス担当
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